スーパーマーケットにおける惣菜の将来像(12/13)
12.高齢者をターゲット~多品種少量化を目指せ
景気は回復基調にあるが、中食を営む各企業は、今後どの所得層をターゲットにするかで成長の度合いが大きく変わってくる。小泉政権による規制緩和を主体にした米国型の新自由経済主義政策により、所得格差を急拡大させてしまったため、未だに所得格差は拡大している。恐らく、景気が回復したとしてもこの流れは変わらないと思われるし、このことからも中食を営む企業は、変化に対応した環境に立ち向かっていかなければならない。真の富裕層をターゲットとする市場と、多数の低所得者を対象とする市場の2極化の中で、どの所得層をターゲットとするかが重要となってくる。
高齢化社会は、確実に進行している。2013年時点で4人に1人が65歳以上の高齢者となっており、今後ますます進行している現状を鑑みると、おのずとターゲットは高齢者になってくるはずである。今後の高齢者は、かつての高齢者と違って、ほとんどがITを活用できるようなっており、今までこうであったという経験則は通用しなくなってくるはずである。しっかりとした市場調査を行っていくことが重要である。
ここにひとつ、一人暮らしの70歳の男性を想像してみた。名前は一郎、上場企業の営業部長で定年を迎えた。2025年のある日の夕方、一郎は夕食を買うために近隣のスーパーマーケットB店に来ていた。2年前に妻に先立たれていたため、料理は苦手であった。出来合いの惣菜を購入しては、夕飯にしていた。ほぼ、毎日来ていたが、種類が少なく一日では食べきれない量が入っていたため、2日に分けて食べていたが、飽きていたところである。足も悪く、遠くのスーパーマーケットには買物もいけないため、インターネットから宅配弁当を毎日注文するか、近隣のコンビニにおかずを買いに行って毎日を過ごしていた。
おそらく一郎氏は、お金は持っているのであろう。残念なことにこのB店は、惣菜の種類が少なく、1人暮らしの高齢者が1回で食べきれる量目で展開されていなかったのだ。もうお分かりであろう。
2025年の高齢者は、沢山種類がある売場を必要としているのである。仮に100アイテムしか陳列できない売場だとしても、毎日数アイテムずつ変更していけば多品種が維持できるのである。決して、すべてのアイテムでボリュームを付けて売る必要はなく、そこには沢山の種類があればよいのである。10人いれば10人の嗜好があると思った方がよい。あとは、高齢者の嗜好に応じた味付けと量目を用意するだけで十分である。