惣菜勝手レポート(8/8)

惣菜勝手レポート(8/8)

8.ネット(宅配)と惣菜

昨今、実店舗(リアル店舗)がネット(宅配)におされて業績を低下させているというニュースはよく聴く話であるが、こと惣菜に限ってみてみると、ネット(宅配)は相当前に発生している。そば屋・すし屋の出前に始まり、1980年代に始まったピザの宅配など、ケータリングサービスなど、ありとあらゆるものが競合となっている。

ネット(宅配)企業を、もう少し詳細に述べると、アマゾンは在庫を保有した無店舗型ビジネスといえるし、楽天などは在庫を保有しない無店舗型のビジネスといえる。また、ネットスーパーなどは、無店舗型も増えてはいるが多くの企業は、在庫を持った店舗型といえる。例えば、これをアマゾン型と楽天型、ネットスーパー型としよう。最近は、ネットスーパーでも冷惣菜を中心に取り扱いを始め弁当や揚物なども品揃えしている企業は若干見受けられるが、多くの企業はどれもスーパーマーケットの実店舗にあるような惣菜を取り扱っているかというとそうともいえない。スーパーマーケットの惣菜関係者は、恐らくスーパーマーケットの中でネット(宅配)の恐怖を一番感じていないのではないか。これは、ある意味当たっている。最近、日本でもはじめたアマゾンフレッシュのラインアップにも弁当や揚物は掲載されていないし、楽天市場でも、そういった類のものは販売されていない。しかし、発想を変えてみるとそうともいえない。簡便メニュー=すぐに食べたいという発想で消費者が思っているのであれば、惣菜も、冷凍食品もみな同じカテゴリーになってしまう。

もしかして、スーパーマーケットの惣菜でネット(宅配)といわれる分類の中で一番の脅威は、生協の冷凍惣菜商品ではないかと思う。生協宅配自体は、スーパーマーケットで扱っているような惣菜はもちろん販売していないが、変わりに温めるだけ、茹でるだけで調理が完了する冷凍食品を豊富に取り揃えている。

もうひとつの脅威は、セブンイレブンのセブンミールではないだろうか。弁当や惣菜、半調理品などの品揃えは脅威であるが、品揃えからいうと、まだ、スーパーマーケットの実店舗のほうが勝っていると思われる。ただし、味は完全に負けているが。

では、スーパーマーケットの惣菜はネット(宅配)と戦わずして勝てるのであろうか。ヒントとなるのが宅配ピザのような宅配ビジネスではないであろうか。スーパーマーケットで惣菜をネット(宅配)販売したいと思うのであれば、ビザの宅配などのように、宅配料を加算した金額でのバイク便での惣菜商品を届ける事業をはじめてはいかがでしょうか。ただし、売場と同じ値段で提供しては絶対儲かりませんよ。私の知る限り、まだ実施している企業はないと思う。

ピザのような宅配ビジネスでは、消費者が「家から出るのは面倒くさい~でも、すぐに食べたい~」というニーズに対して、企業がその対価として上乗せした金額を要求するのであって、そこまでスーパーマーケットの惣菜には消費者も求めていないであろう。

ではどうすればよいのであろうか。答えは、スーパーマーケット企業は、冷めても美味しい商品を開発したり、PB(プライベート ブランド)で商品開発した冷凍食品を提供したりして、ネット(宅配)販売していくことが必要である。攻めの戦略を考案するのである。そうすれば、無駄な人件費を使わずに、売場で売られている価格でネット(宅配)販売ができるかもしれない。

いずれにしろ、アマゾンや楽天などのEC企業が、2時間以内に「揚げたての唐揚をお持ちします~」という時代が、すぐそこに来ている。例えば、ローソンは福島県の店舗で、からあげクンなどをドローンで届ける実験を始めている。そこには、斬新な発想が必要なのかもしれない。

目次:

  1. グローサラント
  2. 中食市場が拡大した理由
  3. 寿司の不思議
  4. 土用丑の日
  5. 汚い惣菜キッチン
  6. 惣菜売場のカラーコントロール
  7. インスタ映え
  8. ネット(宅配)と惣菜