惣菜勝手レポート(1/8)
目次:
1.グローサラント
流行語にもなりつつある「グローサラント」。地元の有名飲食店をスーパーマーケットに誘致してもグローサラントというらしいが、スーパーマーケットが経営し、売場にある食材を調達するなどしてイートインコーナーを飲食店風にしてメニューを提供するグローサラントが注目を集めている。しかし、私が以前、支援していた企業ではすでに、店内スタッフが麺類(そば・うどん・ラーメン・丼物等々)を店内で提供しており、お客様から一定の支持は得ていたし、発想事態はなにも新しいものではない。難しいのは、そこには飲食店のノウハウが必要になってくるということである。
飲食店とスーパーマーケットの違いを紹介しよう。まずは、人の問題である。過去にスーパーマーケットでも飲食店出身の調理人を何人も雇い、失敗している。スーパーマーケットは、基本、大量生産であるにもかかわらず、惣菜で雇ったその調理人は、手作りで時間を掛け調理する割には、商品が中々出てこないため、結果として売上に結びつかないという悪循環をもたらしていた。これは、調理人に能力がないのではなく、オペレーションの違いを理解せずに、雇った企業側に問題がある。
次に、粗利益率にも現れている。スーパーマーケットの惣菜部門の粗利益率は40%前後での推移に対して、飲食店の粗利益率は60~75%の粗利益率になっている。ここにも、飲食店で使って、スーパーマーケットで使わない数字が出てくる。FL(フード・レイバー)コストである。要するに、原材料費と人件費のコストを常に把握しておくことで、営業利益がどれくらいでるかを把握するようにしている。ちなみにFLコストは、60%以内に納まっていることが理想とされるが、企業の経費構造には違いあるため参考程度にとどめておいていただきたい。
また、飲食企業の顧客満足度を高める基本的考え方として、QSCAがある。Quality(クオリティー) Service(サービス)Cleanliness(クリンネス)Atmosphere (アトモスファー)であるが、どれもスーパーマーケットで飲食を実施するとなるとレベル感からいって不安材料はあるが、とくにAtmosphere (アトモスファー)=雰囲気に関しては、スーパーマーケット出身者は理解できていない。例えば、スーパーマーケットで飲食コーナーをつくろうとしたとき、イートインコーナーの延長線上で考えてしまっては、必ず失敗する。メニュー選定はさることながら、店内の雰囲気も考慮した設計をしていかなければならないからだ。ここに飲食出身者(調理人ではない)のアドバイスが必要となってくる。
ただし、今現在はトライアルとして、イートインコーナーも兼ねて、簡単なパスタやビザのみを提供している企業は見受けられるが、成城石井などは店内にある商品(食材)を使用し、盛付も工夫し提供している。また、当然、その商品(食材)もアピールしているし、同時にレシピを付けいるので、お客様は自宅に帰ってそのレシピを見れば、飲食コーナーで提供されているメニューと同じものをつくることができるという相乗効果の発揮が期待できる仕組みとしている企業もでてきた。
いずれにしろ、グローサラントにする場合、新店ならば投資費用は小額で抑えられるであろうが、改装となると高額な投資費用が発生する。成城石井のような店内商品(食材)を使用した取り組みもあるし、イートインコーナーを改装して簡単なメニューで提供する企業もやり方次第では、成功すると思われる。
ここに、ひとつ提案したいことがある。デモキッチンを新設している企業が多いが、そこで5~6席用意して、お金を取って飲食させるのはどうであろうか。旬の食材や新商品のアピールが目的ならば、金額を抑えて提供するもよし、本格的な刺身定職や天丼やステーキを提供するのであれば、飲食店以下、スーパーマーケット以上の金額で提供するのもいいのではないかと思う。最近、どの企業を見てもデモキッチンに従業員が居ない時間のほうが多く、持て余してる企業が多いので、一石二鳥を考えてみた。