なんでも相談【483号】
2018年5月23日
質問
地方建設会社にて工事部長を担っています。1年前に、全社的に人事考課の基準を作り、運用を始めました。先日、その考課結果を確認したところ、ある現場代理人に対する評価が実態と違うように感じたので、工事課長(1次考課者)に尋ねたところ、人事考課の考え方や基準が私の理解と違うように思えました。気になって、別の工事課長にも聞いてみると、また違う受け取り方をしている部分がありました。このようなことが起こるのは、どこに問題があるのでしょうか。(前回の続き)
回答
「被考課者に関する情報を、いかに正確に評価に結びつけるか」は、多くの企業が悩まされている問題です。今回は前回の続きで「難易度の評価」について、考えていきます。
考課項目に対して、「主任として、この行動は『当然の職務(=加点なし)』か、『あっぱれな行動(=加点対象)』か」を決める問題といえます。これらを全考課者の間で統一するには、どうしても時間がかかります。この取組を効率的に進めていくためには、「スキルマップ」を作成することが役立ちます。
「スキルマップ」とは、「○○歳で一人前(現場代理人など)になる」といった、自社で社員に求める目標コースを歩んでいくために必要な「技術者能力基準」を一覧表にしたものです。その作成に必要な手順は下記の通りです。
- 段階(職位・年次など)ごと、仕事の項目ごとに目指すべき職務行動を基準化します。最初にこの検討を十分に行うことで、「部門間の整合性」「考課者によるバラツキ」のでない指標とすることができます。
- 業務や必要とされる能力・知識を一覧表の形式で整理します。建設現場の業務は非常に多岐にわたりますが、主要な仕事をできるだけリストに掲載することで、「習得すべきこと」や「やるべきこと」の目標を可視化できます。
建設会社という点では同じでも、会社が違えば取り組む仕事(工事)の種類や規模が異なり、達成すべき目標は変わってきます。「何年の経験で現場代理人になるべきか」の目標が異なれば、スキルマップの全てが変わってきますので、その会社の実態に即したものを作成することが大切です。
作成作業は、社内プロジェクトで実施されても構いませんし、それが困難な場合には、外部コンサルタントの力を借りながら、プロジェクトメンバーと共に考えていくのも良いでしょう。
現在は、特に人事考課が難しい時代といえます。なぜなら、「部下の行動は、上司が観察しなければ、形に現れない」からです。「年功制」の時代には、考課の基準は「学歴」や「経験年数」でした。「成果主義」では、考課の基準は「現場代理人の粗利益率」「営業担当者の受注金額」など、目に見える成果でした。
最終成果に頼りすぎる考課は、現在では受け入れられ難くなっていますが、それがルールであれば正確に観測することはできます。しかし、現在、「成果につながるプロセス」として重視されている「被考課者の行動」は、考課者が見ていなければデータに残りません。事務所の中で働く仕事であれば、考課者以外に社内の理解者がいて、情報源となる可能性もありえますが、建設現場においては、そのような期待は望めません。考課者には、「日々のコミュニケーション」から始めることが求められのです。
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