ロス改善レポート(7/8)
7.効果の上がるロス分析とは?
突き詰めていくと、ロス率改善に直結するのは、発注・製造数の適正化です。なぜなら、それが店舗での陳列数を決めるからです。
そうすると必要なデータとは、過去の
- 売上数量 (実際何個売れたか)
- ロス率 (その販売の意味合い) の2つに尽きます。
その商品の優先順位をつけるために、ロス金額・売上金額が必要になってきます。 そしてデータは分析するのが目的ではなく、それにより適切な行動を導き出すことが目的です。分析しただけでは現実は変わりません。また忙しい現場での活用を考えると、必要な情報が一目で分かることが大事になります。
それでは、「 一目で分かる 」データとはどんなものでしょうか?例えば、惣菜で曜日別の販売データを分析するとします。すると、加工してできるのは以下のような資料ではないでしょうか。
図6
これでも、会社のシステムから抽出したデータよりかなり見やすく整理されており、読めば分かるデータになっています。とはいえ、「読めば分かる」ということで「 一目で分かる 」データにはなっていません。
ここでいう「 一目で分かるデータ 」はもう一歩踏み込んだものです。簡単にいうと、販売数の意味合いが色で分かるデータです。以下の資料をご覧ください。
色は以下のことを示しています。
- 緑は「ロス率10%以下」:チャンスロスの懸念
- 黄は「ロス率15%~25%」:ややロスが高いので、注意
- 赤は「ロス率25%以上」:ロスが高いので、対策が必要
このデータであれば、その曜日の販売数の「意味合い」が一目で分かります。更に定性情報(天気・気温・イベント・陳列の仕方など)を加味することも大事です。
以上の定量情報(データ)と定性情報を把握することによってはじめて、発注・製造計画の精度を上げることが出来ます。
次に具体例をみていきます。
1.廃棄改善:[ハイキワースト]
図8をご覧ください。これは単純にロス金額の高い順に並べたものです。
図8
廃棄金額の高い商品から順番に並べ、高い順に対策を考えますが、その際ロス率によりその意味合いも変わってくるので、ロス率も必ず確認します。
具体的にいうと、廃棄がでているにも関わらず、ロス率に「赤色」がついていないとすると、普段は普通に売れていて、たまたまある曜日でイレギュラーの要因(例えば、夕方に大雨が降った、別の同じような商品が特売になったなど)が起こった可能性があります。そういったことを踏まえ、発注・製造数の調整、場合によっては商品の改廃を検討します。
2.値引・機会ロス改善:ツール[単品PPM分析]
単品PPM分析では、「売上構成比とロス率」の2つの軸で商品を4つに分類します。(図9参照)
図9
以上のように分類すると、そのゾーンごとに、売上構成比とロス率の関係から意味合いが付きます。それにより取るべき対策の方向性が見えてきます。具体的にいうと、
① 売上:大 ロス率:低 →優等生
- ロス率が低すぎないか?
- 売場の面はしっかりとれているか?
② 売上:大 ロス率:高 →問題児
- 発注数・製造数の見直し
- 売価などの見直しの検討(商品部)
③売上:小 ロス率:低 →金のなる木
- ロス率が低すぎないか?
- 売上拡大の余地はあるか?(商品部・販売部)
④売上:小 ロス率:高 →負け犬
- 何故、売れずにロスになる?【改廃対象】
- 発注数・製造数の調整
というように打ち手が見えてきます。
具体的な表に落とすと、以下のようになります。(図10参照)
図10
大事なのは、「その週だけでなく、過去の週のデータも合わせて判断する」ことです。
なぜならば、その週のデータが
- 一過性のものなのか
- 継続して起こっているものなのか 分からないからです。
この点を加味して考えないと、誤った対策を打つことになる可能性があります。
3.発注・製造数見直し[時間帯別販売数・ロス率]
商品によっては、時間帯別の販売数・ロス率をみることも必要です。(図11)
図11
時間帯別の販売数も、ロス率を合わせてみることにより、打ち手が見えてきます。
ここで気をつけなくてはならないのは、夜の値引きは販促でもあるということです。特に惣菜や刺身はその値引き商品を目当てにご来店される方も多いのではないでしょうか。ですから夜の時間帯のロスが少なすぎると、お客さまの満足度が低くなり、客数減を招いている可能性があるということを考えなければなりません。
いずれにしても、大事なのは、お客さまにとって、その値引きにありがたみがあるか(当たり前になってないか)ということです。お客さまからすると、同じ商品が毎日大量に2割引、3割引、半額になっているとそれが「当たり前」になってしまいます。
そうではなく、お客さまが「通常の商品を安く買えて良かった!(うれしい!)」と感じていただくことではじめて「販促」になるのです。