「新入介護職員の定着率向上と早期即戦力化研究会」開催レポート

「新入介護職員の定着率向上と早期即戦力化研究会」開催レポート

「新入介護職員の定着率向上と早期即戦力化研究会」
開催レポート

10月20日(火)に「高齢者施設向け新入介護職員の定着率向上と早期戦力化研究会」を開催いたしました。
研究会では、新入介護職員の定着率向上と早期戦力化の体制づくりや制度運用について、弊社が問題解決のサポートを行い成功された施設の事例を交えて解説いたしました。

セミナー内容

 カリキュラム 1.介護職員における定着化と早期戦力化の実態把握

1)介護職員を取り巻く外部環境・内部環境の考察
2)採用-育成-定着化の関連性
3)魅力ある職場づくりの盲点

2.問題解決の方向性

1)「ひとづくり」の考え方の明確化
2)キーポイントはOJTの機能化 ~『共育』の第一歩
3)魅力ある職場づくりの盲点
4)問題解決の視点
新卒採用と中途採用における問題解決の考え方

3.問題解決事例 ~育成担当職員が法人の風土を変えた

4.まとめ ~ひとがひとをつくる風土の重要性

セミナーのポイント

1.定着化と早期戦力化の実態把握 ~定着率が悪いのは、賃金だけによるものか?

介護事業において重要な経営資源は「ひと」です。「ひと」の重要性を理解していながらも、職員が定着しない、なかなか成長しないという課題を持つ施設が多くあります。

そこで、はじめに介護労働実態調査等のデータから、次のような介護職員の定着と教育に関する実態を確認しました。

  • 介護職員の離職率は減少傾向にあるが、全産業と比較すると採用率・離職率ともに高く、人材の出入りが激しい
  • 入職から1年未満に離職する人が多い傾向がある
  • 職員は入職時に教育を十分に受けおらず、教育を受けている場合でもその質に対して不満を感じている

また、弊社が経営ビジョン構築支援に携わった際に一社会福祉法人に対して実施した組織のモチベーション診断「MAP-1」:アセスメントツールの結果を例に、職員のモチベーションの源泉について考察しました。

  • 1年未満の職員は、賃金による不満が大きくなく(1年以上3年未満も同様)、職場内の人間関係に対しての不満がモチベーションを低下させる大きな要因となっている
  • 1年未満の職員は仕事の達成感がモチベーションの向上に大きく影響しているが、5年以上10年未満では影響度が低い
  • 1年未満の職員のモチベーションが低い要因のひとつに監督職クラス(5年以上10年未満)のモチベーションが低いことがあげられる

この事例と実態把握から、新入職員の定着化について次のようなことが考えられます。

①新入介護職員の定着は賃金がすべてではなく、仕事における達成感や喜びを感じることが重要

②日々よい仕事をするためには教育が必要だが、現状では入職時に十分な研修やOJTが受けられていない

2.問題解決の方向性

実態把握より、定着化の問題解決の方向性は以下のような人材育成「ひとづくり」が必要であることを解説しました。

①「採用-育成-定着化」を一連のものと捉えて整備する

②介護職員のモチベーションは、仕事における満足から得られることが多いため、モチベーションの高い入職時に充実した育成を実施する

効果的な人材育成は定着化を促すとともに、当然、モチベーションを上げ、自ら学びスキルを高めるため早期即戦力化にもつながります。
この2つを実行するための次のようなポイントをあげ、事例を交えながら説明しました。

■組織的な取り組み

新入職員の定着率向上と早期戦力化の鍵は「組織的な取り組み」です。
「どのような『ひとづくり』をしていますか」という質問に対して、「うちはOJTでやっています」という答えが返ってくるか、答えられない施設が多くあります。これは組織的に人材育成を意識して取り組んでいないことや、育成に対する考え方が決められてない・浸透していない、また教育の実態を育成担当者しか把握していないことが考えられます。

組織で経営理念や経営目標を踏まえて求める人材像を明確にし、採用・育成目標を決定します。この求める人材を育成する方針、方法へと落とし込むことで、効果的な運用が可能となります。

■OJTの機能化

OJTにはメリット・デメリットがありますが、入職のタイミングがバラバラで、人材不足で教育担当者も自ら仕事をしながら教えなければならない介護の現場では、OJT中心の教育にならざるをえません。

しかし、OJTを育成担当者任せにしていたり、担当者により指導レベルにバラツキがある施設が多くあります。また、育成担当者が指導の責任と業務の両立に負担を感じて退職するケースもあります。

このような事態を回避するには、OJTを機能化し、組織的に取り組むことが必要です。指導体制については、例えば新入職員の目標となるような2~3年目の職員が育成担当者となってOJTを行い、ユニットリーダーがその育成をサポートします。さらに組織の事務局が育成体制の運用状況・育成レベルなどをチェックして進めていきます。

これにより、育成担当者は負担や不安を感じず、全職員が育成に関わることでよい部分・悪い部分が見えてきて、よい体制づくりにも役立ちます。また全員が求められる人材像に近づこうという意識が生まれ、新入職員の定着化のみならず、育成担当者の定着化・成長にもつながります。

3.問題解決事例

本研究会では、弊社が新入職員の定着化や育成体制に関する問題解決をサポートし、成功された施設の事例をご紹介しました。

同じ地域の他の法人と比較して賃金が高いにも関わらず離職率が高いという問題に対して、共に育つ・育てる「共育」するしくみを整備して運用し、新卒の新入職員の定着化を図った法人の取り組みです。

共育のしくみと運用が、教える側の意識や技術の向上にも役立ち、現在では育成担当者の約半数がユニットリーダーに昇格して活躍し、育成に意欲的に関わるという組織的な「ひとづくり」のよい例となっています。

最後に、中途採用の即戦力化に関する考え方や方法、育成する経験・育成される経験をつくり積み上げていく組織的なひとづくりが、サービスレベルの向上にも影響することなどについても解説しました。

受講者の感想

ご参加いただいた受講者の方々からは、以下のようなご意見をいただきました。

受講者の声(抜粋、要約)

  • 改めて新人教育の大切がわかった。OJT教育も見直していかなければならないと思った
  • チェックリストを参考にしたいと思います。マニュアルの検討を行っているので、チェックリストをリンクさせて考えていこうと思いました
  • サービスの質の向上には人が大事であると思っていましたが、実際にどのように教育体制を作りあげていくかの参考になりました
  • 様々な現場でのご経験にもとづく話や事例があり、わかりやすかった
  • 自身の職場で活用しやすい、ポイントが明確な説明がよかった

当日、ご多忙の中ご来場いただいた皆様には改めて感謝を申し上げます。
今後も、福祉・介護施設の経営・人材育成等に関するセミナーを開催いたします。
詳しい情報については、こちらのHPでご案内いたしますので、ぜひご覧ください。

  • 福祉(介護)・医療サービス業界向け 接遇トレーナー養成セミナーを11月17日に開催いたします。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 医療・福祉コンサルテーションについては、こちらをご覧ください。
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