第11回「不払い残業代の是正には」
先般、令和3年度に労働基準監督署が監督指導を行った結果、不払となっていた割増賃金(いわゆるサービス残業代)の支払額が1企業で計100 万円以上の事案をまとめたとの発表がありました。その内容は以下の通りです。減少している部分もありますが、依然高い水準であることが伺え、労働時間の適正な把握が必要となっています。
(1) 是正企業数:1,069企業(7企業増)
うち1,000 万円以上の割増賃金を支払ったのは、115 企業(3企業増)
(2) 対象労働者数:6万4,968 人(427人減)
(3) 支払われた割増賃金合計額:65億781万円(4億7,833万円減)
(4) 支払われた割増賃金の平均額:1企業当たり609万円、労働者1人当たり10 万円
※( )内は昨年度比
なお、事例が発覚した主なきっかけは以下の通りです。
- 「一定時間以上の残業時間に対する残業代が支払われない」との情報を基に労基署が監督指導を実施
- 「時間外労働を行った時間について申請させてもらえず、割増賃金が不払となっている」との情報を基に、労基署が監督指導を実施
- 「残業代が適切に支払われない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施
労働時間の把握においては、タイムカード、パソコンの使用時間そして勤怠システム等客観的な記録を基礎とする場合と、自己申告制があります。特に自己申告制においては、客観的記録と自己申告における時刻との間には乖離が存在し、ともするとサービス残業に繋がるケースが多いようです。人事部門では一定程度乖離があればその理由を確認する等、実態の把握が求められます。適正な労働時間の把握が、一層の業務効率化へのインセンティブにも繋がると考えます。