新入社員の定着への取組み

ケース1:A社食品スーパー新入社員の定着への取組み

A社食品スーパーのお困りごと

  • 採用した新入社員が2~3年で離職してしまう。
  • 現場が人不足のため、わかってはいるが、最低限の初期教育(ビジネスマナー、レジ操作など)のみで、現場に入れざるを得ない状況。
  • 現場に定着できず離職となり、結果的に人手不足が慢性的になっている。

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ニッコンのご提案

昨今の若年層の傾向を理解した上で、新入社員研修の内容の変更をご提案!

<コンサルタントの視点>

昨今の新入社員は、安定志向が強く、十分に腹落ちしないと不安を覚える傾向が強い。
特にスーパーマーケットの新人スタッフに指示される仕事は単純作業が多くなりがちである。
導入時の研修では、現場での仕事についてはほとんど教わっていない。
食品スーパーの社会的な機能や役割、1日の仕事内容や流れは全く分からない状態。
このような状態で配置された新入社員は、与えられた仕事が、どのような意味をもっていて、何につながっていくのか、どうしてその仕事をするのかなどがわからず、やらされ感で仕事をすることになってしまう。

<ご提案>

新入社員の初期教育期間中に、【スーパーマーケットの実務について幅広く教育すること】を提案。
【とりあえず現場へ配置】するのではなく、食品スーパーの実務について幅広く理解してから現場へ入れることで、先輩や指導者から指示を受けたときに、「そういえば、研修で言っていたなぁ・・・」と思い出し、補足すれば理解が出来ようになります。
このことが現在の新入社員の負担を減らし、職場での早期成長へつながると考えます。

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研修概要

実施内容

スーパーマーケットに特化した基礎知識を習得させるための新入社員対象スーパーマーケット実務研修

  • スーパーマーケットで働くことへの前向きな意識づけと、必要な知識の習得をする(3日間)
  • 市場について考える(自店、顧客、競合店)(2日間)

研修期間

合計5日間(大きくは3日と2日に分かれています)

実施研修カリキュラム<全5日間>

1.業界一般知識
流通業界の中の小売業としての視点を学習します。小売業の変遷や、スーパーマーケットの変化を追いながら、これからの小売業について考察します。

  1. 小売業の歴史を知ろう
  2. 流通構造の変化を知ろう
  3. 消費者ニーズの変化とスーパーマーケットの変化を知ろう

2.スーパーマーケットの理解

スーパーマーケットの特徴と使命を理解させます。また、食品スーパーマーケットと関係の深い年中イベントについてグループワークを用いて調べます。特に日本の文化(節分、子供の日、お彼岸など)について、どのような意味があり、なぜその商品を販売するのか、といったことを全員で考察します。

  1. セルフサービスってなんだろう
  2. スーパーマーケットの使命とは!
  3. 日本のイベントを知ろう

3.作業の基本

作業の基本基本的な一日の仕事内容とポイントを理解させます。
事例写真を使って基本スタイルの確認をします。ケーススタディを使いながら、定位置管理の重要性について学びます。

  1. スーパーマーケットの一日を知ろう
  2. 作業姿勢・動作の基本を理解しよう
  3. 運搬機器の使い方を知ろう
  4. 定位置管理の重要性を考えよう

4.社会倫理の理解

昨今、社会問題化している悪ふざけについて、事例を示しながら、ことの重大性について考えます。合わせて会社のルールを順守する意識を持たせます。

  1. 社会問題となっている悪ふざけ
  2. 社内ルールを確認しよう

5.衛生管理・安全管理の基本

食中毒の基本知識を学習します。
同時に、「食を扱う仕事」の重要性や危険性についての意識を高めます。手洗いや器具の洗浄の方法を学習します。作業場内、売場内での安全管理のポイントを学習します。

  1. 食中毒は恐ろしい
  2. 手洗いの手順と身だしなみを覚えよう
  3. 調理用具の洗浄、除菌と使い方を知ろう

6.経営理念、経営ビジョンの解釈と共感

経営理念、経営ビジョンを自分の言葉で解釈することで、会社の目指す方向性(店づくり)に共感することができます。

  1. 経営理念、経営ビジョンってどんなもの?
  2. 自分の言葉で解釈してみよう

7.売場づくりの基本

売場レイアウト図や売場写真を活用しながら、スーパーマーケットにおける売場づくりの基本原則を学びます。消費者の購買動機から、売場レイアウトや陳列の基本原則について理解を促進させます。売場レイアウトや陳列について事例や写真、ワークをしながら理解を深めます。

  1. ストアコンセプトとは
  2. 品揃えの原則を知ろう
  3. 陳列の基本原則を知ろう
  4. 売場レイアウトの考え方を知ろう
  5. マグネット売場ってなに?
  6. お客様の動き(客動線)を理解しよう
  7. 売場構成(ゾーニング)を考えてみよう

8.計数の基本知識

現場でよく使う指標に重点を置き、講義・演習・解説を行います。
ボックス図を使って構造からの理解を行います。在庫・棚卸しの重要性について学習します。事例問題を使って、期間における粗利益高、粗利益率の算出ができるように学習します。

  1. 商品の計数を知ろう・売価と原価
    ・値入、粗利、ロスの関係
  2. 部門の計数
    ・部門粗利
    ・(仕入)原価と売上原価
    ・棚卸し   ・在庫
  3. 部門の魅力度を測る指標とは

9.商売人感覚体験ゲーム

品揃え、陳列、接客、計数管理、現金主義、競合調査などの要素を含んだカードゲームです。お客様満足度と自店の儲けが両立することを目指します。振返りを行い、商売人感覚を意識させます。

  1. 「地域一番店を目指せ!」
  2. 振返り

10.市場を構成する3つの「C」

市場(マーケット)について学習します。自店舗を取り巻く環境は、顧客、競合と共にあります。ある程度、規模が決まった市場の中で、自店の顧客がどのように増えていくのかといった基本プロセスを学習します。

  1. 自店、顧客、競合という考え方を知ろう
  2. 顧客とはだれ?
  3. 顧客の特性ってなんだろう

11.マーケット視察

実査では、2グループに分かれて、店舗周辺の街の様子、生活者、通行人などをチェックし、どのようなタイプの人が住んでいるかを調べます。戻った後、地域特性をまとめ、どのような地域の生活者ニーズがあるかを仮説だてます。翌日の店舗調査のポイントとします。

  1. 自社店舗周辺の地域特性を調べてみよう
  2. どんな生活者がいるかな
  3. 実際に街を歩いてみよう
  4. 地域特性のまとめ
  5. 地域ニーズの仮説を立ててみよう

12.ストアコンパリズンの基本技法

競合店買物印象度調査シートやLLマップといった競合店調査手法の基礎を学習します。買物印象度調査シートやLLマップの作成方法について、確認します。

  1. なぜ競合店調査が必要なのかを知ろう
  2. 代表的手法を知ろう
  3. 売場チェックの着眼点とは
  4. 買い物印象度調査、LLマップを理解しよう

13.店舗視察に行こう

実査では、お客様目線で気が付いた問題点を発掘し、対策を立案することの重要性を理解します(お客様として店舗を視察するために、私服を着用します)。

  1. 店舗視察

14.店舗調査のまとめ

グループ及びチームごとに店舗視察のまとめを実施します。お客様の視点で調査した買物印象度調査の結果を集計し、各店の状況を把握します。LLマップを作成し、各店舗の強みと弱みを明確にします。新入社員の目線で、自社店舗が競争優位を確保するための対策を立案し、発表・質疑応答を実施します。

  1. 買物印象度調査をまとめよう
  2. LLマップを作成しよう
  3. 各店の強みと弱みとは何だろう
  4. グループ別発表&質疑応答
  5. 講師コメント

15.到達シート作成

5日間の各研修項目において、気がついたことや“こうなりたい”と思ったことをまとめ上げ、1枚のチェックシートを作成します。これからスーパーマーケットの仕事をしていく上での決意表明をします

  1. シートの作成
  2. 発表、決意表明

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研修後の状況

上述の初期教育を実施して数年間、離職がほとんどなくなったと聞いている。
人事部門、店舗運営部門ともに、初期教育以降の配属後にも新入社員に関心を持ち、熱心に関わっていることがその理由の一つと考える。
しかし、その前段階として最も重要なことは、新入社員の育成を企業の重要課題と捉え今回の取組みをスタートさせたことである。その取組みの結果として新入社員の離職減少につながったと考える。

担当コンサルタント

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齋藤 康人(さいとう やすひと)

食品サービス産業研究所
経営コンサルタント(中小企業診断士)

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関連項目