新型コロナウイルスに対する食品スーパーの対応
新型コロナウイルスの教訓を活かして~お客様の安全対策~
緊急事態宣言後も、スーパーマーケットは生活インフラを維持し続けるために営業を継続している。
東京都は2020年4月23日、都民に対して、3日に1回程度の買い物を呼びかるとともに、店舗の混雑緩和策の具体例を公表した。
<お店の混雑緩和策~工夫の具体例~>
- 高齢者、障害者、ヘルプマーク着用者、妊婦など、専用の買い物時間の設定
- 買い物カゴ数制限による入店抑制
- 惣菜等のバラ売りからパック詰めへの変更
- 曜日・時間帯による特売やポイントアップの中止
- 品出しの時間を工夫するなど、開店時の行列誘発の回避
- イートインスペースの中止・袋詰めスペースの拡大など
- ホームページやSNSによるオフピーク情報の発信
※2020年4月23日東京都発表資料
1)お客様の安全を考慮した対策
政府は店内が混み合ったり、行列ができないような工夫を業界団体と連携して進めていくとのことであるが、大手企業を中心に、3密(密集、密閉、密接)を避けるためにも、入店制限または、高齢者、障害者、ヘルプマーク着用者、妊婦などに対して優先時間を設けて入店してもらっている。
<主な企業の対応>
オーケーストア一部店舗
- 客には店の前で間隔を空けて並んでもらい、10分ごとに10人ずつ入ってもらうようにしている。
イオンリテール一部店舗
- 大阪府35店で14時~15時「高齢者等優先時間」開始。「ゆうゆう優先タイム」と称して、妊婦、高齢者、身体の不自由な人、ヘルプマークを付けたお客が優先的に買い物できる時間帯を設定している。
コストコ
- 入店や同伴人数に制限を設けて家族1名までとしている。また、 試食も中止。ただし中小企業では、ただでさえ人手不足の状況であるにもかかわらず、強制的に入店制限をしてしまうと、それを整理する人員を確保しなければならず、製造や品出しが間に合わない状況が発生する可能性があるため対応に苦慮している。
- 来店されたお客様に対しては、レジ会計時の立ち位置を示すサインを設置したり、双方向の通行ではなく、一方通行にするなど、お客様同士の過度な接触を避ける工夫を凝らしている。
2)業界団体の対応
報道各社からスーパーマーケットの食料品の品薄状態についての問い合わせが続くことに対して消費者の不安を解消するために、全国スーパーマーケット協会公式ツイッターでコメントを発表した。
公式ツイッターでは、「メディアの皆さんから続々電話取材が来ています『食品の生産、物流は滞ってませんし、店が閉まるわけでもありません。営業は継続されます。店頭の欠品も徐々に回復します。慌てないでください。そしてメディアが煽るようなことは、どうぞお控えください』というようなお話しをしています」とツイートしている。
2020年3月36日全国スーパーマーケット協会公式ツイッター
また、スーパーマーケット協会3団体(オール日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会)は2020年4月24日、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として、お客に買物エチケットを伝える統一ポスターを発表した。
そして、流通3団体は感謝と敬意を込めた団体統一ポスター「~全国の笑顔あふれる食卓を守りたい~」を作成した。
2.新型コロナウイルスの教訓を活かして~従業員の安全対策
1)従業員のストレスの増加
緊急事態宣言の発令に伴い、外出自粛が続く中、スーパーなどの販売額は増えており、どこの店舗でも、最低1割の伸長があると思われる。
問題なのは、スーパーマーケットは以前から人手不足に苦しんでおり、ギリギリのシフトを組んで回していた店も多い。にもかかわらず買い物量が増えたことで、商品補充など業務が増加しているのに加え、不特定多数のお客様と接触するため感染リスクへの不安も大きい。従業員のストレスは相当膨らんでいるものと思われる。
また、欠品が続くとお客様からの問い合わせが増えて、時間を取られてしまう負のスパイラルに陥っている。この人手不足問題だけは、早急な解決策は中々みつからない。
2)従業員の安全を考慮した対策
従業員の方々は、危険と隣り合わせになりながら働き続けている。従業員の安全の確保のために実施している各社の取り組みとしては、レジ担当者を中心としたゴム手袋の着用や、レジでビニールカーテンを設置して、会計時の飛沫(ひまつ)感染防止を図っている。元々、スーパーマーケットでは、マスク着用が義務付けられている企業がいいが、非生鮮部門やレジ部門にまで広げた形となっている。もちろん、以前から手洗は徹底されている。
3)特別手当の支給
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、スーパーマーケットをはじめとする小売企業は、心理的負担を和らげるため、慰労のために従業員に「特別手当」を支給する動きが広がっている。
<主な企業事例>
イオン
- パートやアルバイト全従業員に一律1万円の特別手当を支給
- 役員の月額報酬の10~30%を、それぞれ自主返納し原資に充てる
セブン&アイ・ホールディングス(HD)
- パートやアルバイト全従業員に、出勤に数に応じた特別手当に加え、2日間の特別休暇(有給)を付与
ライフコーポレーション
- 全従業員約4万人に「緊急特別感謝金」(総額約3億円)を支給
4)営業時間短縮
政府の臨時休校要請により小学生や保育園・幼稚園の子どもを抱える従業員が通常通りに出勤できず、人繰りに影響が出ているため、企業によっては時間を短縮して営業してる。これに対しては、賛否両論はあるものの、保護者は預入先がないのであるから、営業時間短縮も致し方ないことである。もともとの人手不足に追い打ちをかけたことになるが。
そして、この営業時間短縮が3密(密集、密閉、密接)を助長している。このジレンマは、なんとも解決しがたい問題である。
3.新型コロナウイルスに対するスーパーマーケット店内でのお客様の困った行動
ほとんどのお客様は、あまり外には出たくないけれども、生活のためにスーパーマーケットに来店されているかたも多いはずであるが、中には、外出自粛の中ストレス発散のためにスーパーマーケットに来店しているお客様も増えているように思われる。
<店舗で起きているお客様の行動 事例>
- 店内で主婦同士が永遠と話をしている
- 年配の男性達がマスクもせずに「コロナ怖いよね~」などと言いながら立ち話をしている
- 「1家族1点」と記載しているにも関わらず、家族で買い物をしてそれぞれ1点ずつ買ってく
- 「おひとり様1点」と記載しているにも関わらず、何度も来店して商品を購入していく
- 店頭備え付けの消毒液をボトルごと盗む、または消毒液を噴霧してビニール袋に入れて持ち帰る(理由を聞くと、どこに行っても消毒液がないからだとか)
お客様からの問い合わせやクレームで非常に対応に苦しむ場面も散見されるようになった。
<問い合わせ、またはクレーム状況>
- 「あれはないのか、これはないのか」としつこく聞いてくるお客様
- 「何度も商品を触っている人を注意してほしい」というお客様
- 「自分が商品を見ていると隣にくる人がくるので何とかしてほしい」というお客様
- 「レジで2メートル空けないので注意してほしい」というお客様(小さなお店で)
- 配達をしていない店舗でも「配達をしてくれ」とごねるお客様
ソーシャルディスタンス(社会的距離)という言葉が流行しているが、例えば売場面積が150坪以下の店舗で、レジ待ち間隔を2メートルにした場合、レジ待ち客で溢れかえり他のお客様の買物ができない状態になってしまうなど、一言でソーシャルディスタンスと言われても、解決が難しいも問題も発生している。
3.緊急事態宣言下でのスーパーマーケットの欠品ジレンマ
「3日に1度の買い物を」の掛け声のもと、お客様がそれを行動しようとすると店内は以前にもまして、店舗から商品がなくなる現象が見受けられる。バックヤードも人員も限られているのでしょうがないことであるが、質の悪いお客様から「あれがないのか、これはないのかと」と、店内での問い合わせが増え、従業員はストレスが溜まる一方である。
であるならば、生協などの宅配でそれをカバーすれば良いとの意見もあるが、生協は生協で組合員が注文してからのメーカーへの発注にも関わらず、以前にもまして欠品が発生している状況である。ネットスーパーも新型コロナウイルス感染症の影響で急激な注文増による在庫不足が発生しており、各社「お詫び」メールを発信している。
買物頻度を過去に当社で調べた結果、各社月7~8回程度であり、月8回の来店としても3日か4日に1回の来店頻度になる。なにを言いたいのかというと、本来ならば通常の買い物をしていると早々に欠品は起こらないはずであるが、1人当たりの買上点数が多いために欠品していることになる。所謂、買いすぎているのである。
しかし、トイレットペーパーの事例にあるように「●●がなくなりそうです」などのデマもあるし、早く買わないとなくなってしまうんじゃないかという消費者心理が、お客様に余計なものを買わせているのは否めない。
また、学校給食がないことやテレワークを余儀なくされているがために自宅で過ごす時間が増えたことと、一方で飲食店の休業や時短営業が相次いでおり自宅で食事をする頻度が増えたことなど、スーパーでの買上点数が増えている。
これには、「3日に1度の買い物を“必要なものだけを買ってください”」としか言いようがない。
海外スーパーマーケットの新型コロナウイルス対応
- 海外事情というと、ニューヨークでは、まず初めに実店舗よりもオンラインでの在庫が消えたことを受けて、実店舗での買いだめに走ったようである。買い占めは、日本と同じように感染予防アイテムから始まり、基礎食品、保存食品に広がった。他の大都市でも、全面封鎖が始まるのではないかと臆測が流れ封鎖による品不足を恐れる人々がスーパーに殺到してしまっていた。
ニューヨーク
- 開店前に高齢者専用の買い物時間を設定
- ソーシャルディスタンスによる入場者の列
- 店内は通路が一方通行
ロンドン
- スーパー等での入店者の制限
- 店の前では、2m 間隔で並ぶことを推奨
中国(湖北省)
- 各家庭で3日に1人の来店
※2020年4月23日東京都発表資料
こんなときだからこそやらなければならない食品スーパー店長の3つの仕事!(その1)