2018年5月9日

なんでも相談【482号】

2018年5月9日

質問

地方建設会社にて工事部長を担っています。1年前に、全社的に人事考課の基準を作り、運用を始めました。先日、その考課結果を確認したところ、ある現場代理人に対する評価が実態と違うように感じたので、工事課長(1次考課者)に尋ねたところ、人事考課の考え方や基準が私の理解と違うように思えました。気になって、別の工事課長にも聞いてみると、また違う受け取り方をしている部分がありました。このようなことが起こるのは、どこに問題があるのでしょうか。

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回答

「被考課者に関する情報を、いかに正確に評価に結びつけるか」は、多くの企業が悩まされている問題です。「考課項目への適用」について、被考課者の行動を、考課者として評価するためには、下記の取り組みが必要です。

  1. 考課基準を読み込み、理解する
  2. 被考課者の行動のひとつひとつを「どの評価項目で」「どれだけ加点・減点するか」を決める (職位相応の場合は、加点も減点もしない)
  3. 被考課者の行動を総合して、各評価項目の点数を決める

ところが、これらを決めるのは簡単ではありません。建設会社の現場業務での考課項目は、「業績(現場の粗利益率、事故の有無など)」だけでなく、「品質管理」「原価管理」「工程管理」「安全管理」の能力や行動状況といった細目が設定されていることが多いため、それぞれに対して、考課者全員が同じ考え方を持って採点するのは案外難しいものです。

ここでは、「本人の知識不足で作業上の品質不備が発見できず、補修工事が発生した」という場合を考えます。この場合、「品質」の不備を出発点に、補修工事を要したことで、同時に「原価」「工期」にかかわる不備を出したことになります。建設現場では起こりがちな状況ですが、たとえば下記の考え方が有り得ます。

1.「品質管理、「原価原価」、「工程管理」でそれぞれ減点する

原則としては、望ましくない評価です。減点対象はどれか1項目に決めるべきです。逆に、問題なく施工していたら、品質・原価・工程とも同じだけ加点しなければ、フェアとは言えませんが、なかなかそのような気持ちを持つのは難しいものです。結果、減点が先行する考課となりがちです。

2.発端である「品質管理」でそれぞれ減点する

今回の発端が品質管理上の不備であれば、最も教育・指導すべき対象項目である「品質管理」1項目で減点するのは、頷ける判断といえます。

3.フォローで最もうまくいかなかった「工程管理」で減点する

本人が、現場のフォローのために工程調整に苦労したのであれば、そのことは決して忘れないでしょう。教育効果を考え、「工程管理」1項目で減点することも判断としては可能です。

4.最終的に、自分でフォローし切れなかった項目で減点する

「工程は自分で調整した」、「結果、品質は是正した」、しかし「お金は手当てできなかった」という場合、「原価管理」で減点することも理にかなった判断です。 「これはないだろう」と思われる考課項目もあるかも知れませんが、実際に考課者を集めて挙手でアンケートをとってみると、案外少数意見がみられるものです。周囲の意見がわからない状態で考課をすると、考え方はより多様に広がるでしょう。

このように、考課対象事例をいくつかピックアップし、社内会議の場やプロジェクトメンバー会議などで出来るだけ多くの人が納得できる判断を蓄積していきます。そして、主要な事例について統一見解を作成し、社内説明会などで周知します。これが難しければ、外部コンサルタントを活用しても良いでしょう。いずれにしても、考課者の判断次第で、被考課者の昇給・賞与・昇格にまで影響する人事考課ですので、早急に判断を下すことよりも、悩みながらでもあるべき姿を探っていくことが求められます。

ニッコン建設人事(組織人事診断)

 

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