「惣菜部門における寿司カテゴリーの販売力強化セミナー」開催レポート
惣菜部門を中心に寿司に携わるバイヤーやスーパーバイザーの方々を対象として、『惣菜部門における寿司カテゴリーの販売力強化』セミナーを開催いたしました。
スーパーマーケットの黎明期から寿司カテゴリーに携わり、ヤオコーの惣菜子会社である株式会社三味の取締役寿司部長としてご活躍された岡部正英氏のお話に、北は青森、南は鹿児島から多数のご参加を頂きました。以下、レポートいたします。
セミナーのプログラム
プログラム | 1.寿司をめぐるマクロ環境と市場の現状2.スーパーマーケットの寿司部門(40年の歴史)を考える
1)シャリ 3.寿司部門の商売を実践する 1)商品開発(季節の捉え方と月間計画は基本) 4.原料の調達と商品開発及びこれを実現する商品化技術 1)具材の選定と調達に関する考え方 5.寿司部門の今後に向けて 1)寿司部門の独立 |
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セミナー要旨
1.寿司をめぐるマクロ環境と市場の現状
担当:食品・サービス産業研究所 経営コンサルタント/池田直史
寿司全般をマクロ的な切り口で分析する池田講師
水産物の消費が低迷する中、国内における寿司の消費は、1兆6,111億円と大きな市場規模があり、リーマンショックで一時的に低迷したものの、順調に市場規模を拡大している。特に、回転寿司店と宅配寿司の成長が著しく、従来のテイクアウト寿司専門店の市場を侵食しつつある。このように激しい異業種間競争の中で、スーパーマーケットの寿司は、商品そのものの品質(味)に加えて、顧客の利用動機や利便性を敏感に察知して、付加価値を顧客に訴えることにより、激烈な異業種間競争に打ち勝つ必要性がある。これを実現するためには、単なる部門カテゴリーとして管理するのではなく、売上・利益ともに貢献度の高い寿司について、全社的な戦略が必要であるという問題提起したい。
2.スーパーマーケットの寿司部門(40年の歴史)を考える
担当:食品・サービス産業研究所 パートナーコンサルタント/岡部正英
まず、はじめに商品開発や品揃えを考える前に、寿司商売に携わる際の最も根源的な考え方(商売の理念)について考えてみたい。
言うまでも無く、寿司はシャリとネタで構成されており、生寿司に限らず、巻物においても鮮度がもっとも重要である。生産性や効率といった売り手の都合のみを優先することは、鮮度を最優先に考えるお客様にとって、どのようなメリットがあるかを、改めて寿司に携わる関係者全員で再考する必要がある。
特に、シャリについては、炊飯や酢合せ及び保管が徹底されていることが基本であることから、シャリの渇きや劣化を防止するためにも、お客様に近い場所で加工することが望ましい。そのため、シャリの外注化のすべてを否定するものではないが、企業として再検討する必要がある。なお、シャリ玉を外注化することは、製造時間が経過したシャリをお客様に提供することから、お客様が求めている寿司の鮮度というニーズを否定するものであるため、お勧めすることはできない。
また、ネタについても、基本はインストア加工が原則であり、冴えのあるネタの切り口こそ、差別化の源泉であると考える。そのため、包丁が切れるということが大前提となり、技術も必要となる。
特に、ネタのサイズや重量のバラつきは、商品の見栄えが悪くなるだけでなく、原価にも大きな影響がある。つまり、商品化のブレは、荒利率のブレにつながり、損益のブレに直結する。そのため、技術教育の徹底することが必要となってくる。
一方で、セット原料やキット原料を否定するものではない。適切な冷蔵管理ができていれば、十分な鮮度を担保することができる。特に、チャンスロスに注意しなければならないが、販売計画に基づいた発注ができるため、イベント時は、有効な武器となる。
最も重要なこととして、おいしい寿司を提供するために不可欠である加工技術を、会社の見えざる資産として、どのようにして伝承していくかを、常に考えながら仕事に望むことが必要である。特に、組織全体で、誰が・どのようにして・どの技術を教えて、伝承するかを明確にして、これを継続的に実行し続けなければならない。
実務密着の事例を活用して講義する岡部講師、田子講師
寿司を提供することは、安易な機械化による単なる作業ではない。機械化による商品の扱いが「寿司」への思い入れを阻害する。我々は日本の食文化である「寿司」を作っていることに責任感を持って、自らを律する必要がある。これは、単純に寿司ロボット導入の是非を論議することではなく、顧客不在の安易な機械化は、加工技術が途絶し、これを回復させるには、多くの時間と労力が必要となることから、技術伝承という視点も考慮して設備導入を考えるべきである。私見ではあるが、のり巻は寿司加工の基本であることから、品質保持や技術伝承の観点から、安易な機械化については、お勧めできない。
3.寿司部門の商売を実践する
担当:食品・サービス産業研究所 パートナーコンサルタント/岡部正英
次に、寿司の商売を実践するためのマネジメント手法について考えてみたい
まずは、アイテム数や売場を考える以前に、年間計画(52週)を持ち、月間計画⇒週間計画とイベント計画が連動することによって、食材調達や商品開発を計画的に進めることが必要である。そして、52週計画をはじめとした計画(仮説)と反省(‘検証)を繰り返すことが、今週が来週に、今月が来月に、今年が次年度につながっていき、継続的な業績向上が可能となる。
特に、重点商品10品で圧倒的な支持を得ることが、売上と利益を確保することが肝要であり、月次のサイクルで目標設定と検証することによって、定期的に重点商品の改廃と商品開発に取り組むことが、他社との差別化が実現できる。時間帯MDと
これを実践するためには、バイヤーは、値入を知り、販売目標と利益を試算して、計画を立案し検証することが、最重要の職務であることを再認識することが必要である。
次に、時間帯ごとの販売動向を把握して時間帯別MDに基づいた販売計画を立案し、販売計画と人員シフトとの連動性を確保する重要性について説明したい。
一般的に、寿司は、その商品特性(ハレの商品) から、昼と夕方そして夜に販売チャンスがある。そのため、自社において、いつ売れて何時がピークとなるかを把握する必要がある。
今までの検証では、弁当と寿司では、売上の山が30~60分程度のずれがあり、自社のデータでこの違いを把握することが前提条件となる。
これらの時間帯MDに基づいた販売計画と連動した人員シフトを考える必要がある。当然人員には制約があるが、人員が必要な時間帯に応じた人員シフトを検討し、販売計画(時間帯販売目標数)と作業割当表(誰が、何時、何を、幾つ、何処で)の検証を繰り返すことが、継続的に業績を向上させるために必要である。検証なくして次の「販売計画」はありえない。また、検証なくして次の「作業割当」の作成はない。
更に、寿司の商品特性(ハレの商品)上、イベント時には大きく伸張するカテゴリーである。そのため、イベント時における戦い方について解説する。
イベントにおいても、イベントは年次ごとで繰り返されることから、過去のデータから時間帯別に販売予測して、何時・何を・幾つ必要とするかという時間帯別MD計画を立案して、これと連動した作業割当を編成することが重要である。
また、現場に対しては、売り込まなければならない重点商品(定番商品とイベント特性商品)への取り組み(店別の販売個数や時間帯別販売目標)を明確に提示することが必要である。
なお、私の経験から言えることは、8月の業績を確保するためには、お盆での取り組みの良し悪しによって、変わってくる。言い換えれば、お盆以外の日が苦戦していても、お盆の取り組み次第で、十分に逆転が可能であるといえる。また、お盆の曜日の組み合わせによって、業績が変動し、戦い方が異なってくることを留意すべきである。
4.原料の調達と商品開発及びこれを実現する商品化技術
担当 食品・サービス産業研究所 パートナーコンサルタント 田子哲也
具材の調達と商品開発は、足と頭を使うことが大切である。例えば、「ベンダーや問屋任せにして、机の上だけで商談してはいないか?」「必ずメーカーと直接交渉して、産地(加工場所)を確認しているか?」「新規原料の投入時は、必ず自分で試作⇒テスト販売⇒反省を実施しているか?」という基本事項について、改めて確認したい。
また、インストアプロモーションにおいては、お客様に対して、苦労して商品開発した商品のよさを伝えるために、何をすべきかを常に考える必要がある。例えば、POPとMDシールの連動で、お客様に作り手のこだわりをPRすることも可能である。
5.寿司部門の今後に向けて
担当:食品・サービス産業研究所 パートナーコンサルタント/岡部正英
最後に、スーパーマーケットにおける寿司のあるべき姿と将来像について提言したい。
現在、多くの企業では、惣菜部門(又は鮮魚部門)の中で寿司が一括管理されている。そのため、惣菜部門(又は鮮魚部門)の売場チーフが、寿司を包括して管理している。寿司は、食品スーパーで売上を伸ばすことのできる数少ないカテゴリーであり、圧倒的に高い利益率に着目すると、今後は、売上や仕入、MHや経費を部門として管理することが必要になってくる。寿司は、惣菜部門における売上構成比を30%、店舗全体では3.0~3.5%を狙えることから、これらの強みを最大限活用するために、利益管理を徹底して、寿司を部門として独立させることを提言したい。企業規模の大小による制約はあるものの、独立部門として管理することによって、全社的に高い貢献が可能となる。
また、将来的に寿司部門の独立を実現するために短期的に取り組むこととして、「時間帯別MDによって人員シフトを確保することによる機会ロスと廃棄ロスの最小化」と「イベントの戦いを制するための計画と検証」に取り組んでもらいたい。この2つの対策は、どこの企業が取り組むかの競争であるため、できる限り早急に着手することをお勧めしたい。
以上、セミナーのレポートでした。
当日、ご多忙の中ご来場くださった皆様には改めて感謝を申し上げます。今後も、スーパーマーケットの皆様を対象としたセミナーを積極的に開催していく予定でございます。
また、惣菜部門全体で業績を向上させるコンサルテーションや寿司に特化したコンサルテーションなど、多くの企画をご用意させて頂いております。
ご希望の方は、お問い合わせいただければ幸いです。
今後とも日本コンサルタントグループを宜しくお願い申し上げます。
■ 日本コンサルタントグループ 会社概要
- 【会社名】
- 株式会社日本コンサルタントグループ
- 【所在地】
- 〒161-8553 東京都新宿区下落合3丁目-22-15 ニッコンビル
- 【代表者】
- 清水秀一
- 【創 業】
- 1956年12月
- 【事業内容】
- 総合経営コンサルタント業(企業診断・改善支援、人材育成・能力開発、市場調査、地域開発、e-メールプロモーション・出版事業)
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