「2010年ニッコン現場代理人研究会」開催レポート

「2010年ニッコン現場代理人研究会」開催レポート

4月27日(火)に「2010年ニッコン現場代理人研究会~建設業淘汰時代の現場達人養成~」を開催いたしました。

研究会では、建設現場における現場代理人の仕事の実態を例にあげながら、問題点を指摘し、社内教育のあり方について解説をさせていただきました。

セミナー内容

1.各社の現場代理人意識と教育実態

1)ある研修事例からの驚き
2)落ちた施工力と交渉できない現場代理人例
3)伸びている会社の現場力
①施工提案力を磨いて総合評価落札受注増加
②赤字を黒字にする現場代理人

2.現場代理人の達人(プロフェッショナル)育成方法

1)何をどのように教育するか
2)教育計画と実施例
3)教育成果を上げるポイント

 3.教育・研修Q&A

Q1 忙しくてその都度の研修は・・
Q2 やる気の出ない雰囲気で・・他

4.テーマ別研修例施工現場力・変更提案力・コストダウン力・OJT指導力 など

5.まとめ(質疑応答)

セミナーのポイント

(1)信頼と利益を得るために

現場代理人に求められているもの、それは発注者、協力会社、近隣住民の方々からの信頼を得ること、そして利益を出すことです。

技術の進歩や景気の動向など、時代は常に変化しています。それに伴い、工事の中身も変わってきています。この変化に対応しながら、発注者が困っていること、してほしいと思っていることをきちんと行うことで信頼が生まれ、次の仕事を得ることができます。

また、基本的なことですが、いくら大きな仕事をしても最後に利益が残らなければ会社は存続しません。最終的に利益を残して仕事を進めていくにはどうすればよいか、これは現場代理人が管理していくべき重要な課題です。

例えば、強度の違う鉄筋を使う場所を間違えてしまったなど、あってはならない間違いが現場で起こっています。その原因を現場代理人に聞くと、内容や事実を「知らなかった」という答えが返ってきます。

また、「SD295AとSD295Bの違いは何か?」「D22とD25の直径の識別方法は何か?」と不意に質問すると答えられない若手社員がいます。

サービス業、例えばアパレルショップの店員なら、素材の種類から流行のデザインにいたるまで知識を得たうえでお客様の質問に答えながらセールスをしています。売場にいる全員が挨拶や言葉遣いなどのマナーができていてプロとしてお客様に接しています。

建設業もそれほどしっかりと教育し、質問に答えられないレベルなら現場に出してはいけないというように、若手社員、現場代理人の管理を徹底しなければいけません。

(2)マニュアルだけの教育の落とし穴

「うちの会社は教育体系ができていて、マニュアルもしっかり整備されていて、教育はしっかり行っている」という会社も多いのではないでしょうか。

しかし、「教えています。でも現場担当者の行動に表れていない」では、教えていないものと同様です。

熟練した現場代理人は、見ただけ触っただけで鉄筋の太さを判断したり、図面の裏にある情報を読み取り施工判断をし、段取りを組みます。それは、経験の積み重ねによりできることです。若手社員はいくらマニュアルを読んでも、講習会の教室で先輩社員に何度説明を受けても、実際に触ってみたり、現場を見たりしないと理解できないのではないでしょうか。

現場・現物を知ること、また、なぜそうなるか、なぜそのような決まりがあるのかという技術的な裏づけや、原理・原則を教えることが現場対応力のある社員を育成するには必須です。

ダミー
模型を使って解説する中村講師

(3)伸びている会社の現場力・研修例

伸びている会社は、教育に力を入れています。特に「うまく説明できる」ことに重きを置いています。公共工事の入札に際し、官公庁からのヒアリングに答える場面でこの能力が受注に大きく影響するのです。決められたことだけに答える準備をしていても、より具体的な質問に答えられないと、それだけで面接官からの信用が落ちてしまいます。

答えられないのは、知識・準備不足、またはプレゼンテーション能力不足が考えられるため、そこを重点的に教育し、大きく受注を伸ばしている企業があります。

また、近隣対策にもこの説明する力が役立ちます。近隣住民の方の不安を払拭するようなわかりやすい説明とコミュニケーションが、信頼へとつながっていくからです。

例えば、近隣住民の方々にわかりやすく説明するために模型を使い、ビジュアルに訴えかけるような説明をすることが考えられます。これは若手社員への説明も同じです。教わる側が興味を持つような教育の仕方を指導者が工夫していくべきなのです。

そして、働いている人たちが気持ちよく、前向きにやりがいを持って仕事をし、その結果、会社が良い方向に向かうように、教える側が熱意を持って何度も繰り返し指導していくこと、これが現場代理人教育で大事なことです。

(4)まとめ

以上のような現場代理人、若手社員の現状を踏まえて、ニッコンで行っている教育のステップやプログラム内容を研究会ではご案内いたしました。
また、以下のような教育現場でよく出てくる疑問や、問題点の対処法についても例をご提示いたしました。

  • 教育計画がなく、研修を行ってもその場限りの研修効果しかない
  • どうせ評価(待遇)が同じだから教育、勉強はしてもしなくても同じであるという研修に対する消極的な風土があるが・・・
  • 追加変更工事で挽回することが利益を生み出すポイントだということはわかるが、それをできるにはどのように現場技術者に教育すればよいか?

参加いただいた受講者の方々からは以下のようなご意見をいただきました。

受講者の声(抜粋、要約)

  • 会社づくりは人づくりであることを改めて実感した。
  • 社員間の意識の温度差をどのように埋めるかが課題だと感じた。
  • 教育体系は整っていたものの、マニュアルを配布して終わっていたり、研修をして終わっていたりしていました。情熱と繰り返しが大切だとわかりました。
  • 絵や道具、模型を使って説明していたのでわかりやすかった。
  • いろいろな案件を例に勉強できてよかった。