ニッコン建設業フォーラム2020 開催レポート

ニッコン建設業フォーラム2020 開催レポート

令和2年2月14日(金)に「ニッコン建設業フォーラム2020」を日本橋高島屋三井ビルディング9階 日本橋ホールで開催いたしました。

今年は、「地場建設業の浮沈の鍵を握る「攻めの人材獲得・確保策」~建設企業は受注獲得競争から人材獲得競争へ、そしてまた次の受注競争へ~」と題し、地場建設業の持続的な成長に不可欠な、5年先、10年先の受注のための「人材の獲得・確保」について、新卒・中途採用、海外人材活用、M&A等多様な視点からご提言いたしました。

全国から多くの建設企業経営者にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

forum2020

次第

主催者あいさつ

株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役社長 清水秀一

建設業フォーラム2020 イントロダクション

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 所長 長谷部雅彦

Session1:企業の魅力発信による人材獲得‐1~組織力と技術力で技術者(離転職者)を引き寄せる~

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 建設マネジメント室 室長 丸谷 正

Session2:企業の魅力発信による人材獲得‐2
~働きやすさとやりがいで若者(新規採用)を引き寄せる~

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 建設経営支援部  副部長コンサルタント 菅原政郎

Session3:外国人の受け入れによる人材獲得

株式会社HRブリッジ 代表取締役 加藤浩之

Session4:M&Aによる人材獲得

株式会社日本M&Aセンター 業界特化事業部 業界再編部 建設業界支援室 高山義弘 氏

Session5:総講 ~結局、経営の質を上げた企業が勝ち残る~

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 建設営業・人材戦略研究室 室長 酒井誠一

閉会あいさつ

株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役会長 清水正行

 

講演の要点

Session1:企業の魅力発信による人材獲得‐1
~組織力と技術力で技術者(離転職者)を引き寄せる~

建設産業研究所 建設マネジメント室 室長 丸谷 正

forum2020_marutani建設業界では30歳代が不足しており、10年後の現場代理人不足により、大型案件の受注力が低下し、収益が著しく低下することが懸念される。そのため、20~30歳代の確保が喫緊の課題である。

建設業から他産業への転職が多いため、人材流出防止のために繋ぎ止めが必要である。また、他産業から人材獲得の取り込みも強化すべきである。

そのため、第一段階として、給与待遇・労働条件面の整備が必要である。第二段階として、仕事の内容、能力活用や能力開発で魅力を作り出す必要がある。

そのために、現場代理人の原価管理能力先端技術(ICT・IT技術)活用による高生産性を実現する必要がある。また、生産性の高い業務を実現するための組織風土、マネジメントシステム、自律的に働くことのできる組織作り、現場代理人の教育体制の見える化が不可欠

先端技術活用では、ソフト本来の機能に加え、「2つ目の機能」として自社の活用メリットや利便性を見出し、使いこなせるかがポイントである。

結論として、人材を獲得・確保するためには、①厳しいけれども、高い専門スキルが身につく、②組織としての仕組みがしっかりしている、③価値を生み出すコア業務に時間を割くことができる、魅力のある会社になることが必要である。

 

Session2:企業の魅力発信による人材獲得‐2
~働きやすさとやりがいで若者(新規採用)を引き寄せる~

建設産業研究所 副部長コンサルタント 菅原政郎

forum2020_sugawara学生にとって「誰と仕事をするか」という会社選択の基準も重要度が高まっているため、インターンシップでは、学生と社員との接点を増やす必要がある。社員と学生の接点を自然に増やすインターンシップの事例を紹介。

人事環境面では、「自らの成長」や「福利厚生・手当の充実」への関心が非常に高いため、資格等級制度、賃金制度、評価制度の整備が重要である。また、働き方改革に対応し、効率的な働き方を評価する制度設計が必要である。

資格等級制度においては、等級別の役割や能力、昇格要件を明確にする。また、事業規模や方針・方向性に基づいて制度設計する必要がある。

賃金制度については、責任・権限の大きさ(役割)に基づき、シンプルで分かりやすく、実績や能力を反映できる柔軟な賃金制度を構築すべきである。

人事評価制度については、「組織が求める人材」としての社員への期待を示し、日常の部下へのマネジメントと人材育成の観点から、「観察」「傾聴」「共感」により運用していくべきである。

 

Session3:外国人の受け入れによる人材獲得

株式会社HRブリッジ 代表取締役 加藤浩之

forum2020_kato昨年の4月より、入国管理法の改正や新・担い手3法(品確法と建設業法・入契法)の改正により、建設業界において外国人の採用環境が整い始めている。

また、若手人材の不足や将来の技術者の不足から、「日本人の代わり」という考え方でなく、人材採用の1ルートとして、外国人採用を考える必要がある。

ベトナムの人材は、能力・意欲・日本企業との親和性も高く、「仲間」として働くことが期待できる。

2019年より技能実習生受け入れのために月給制、キャリアアップシステム、建設業法の第3条への許可が必要となった。今後、海外人材を採用するには、技能実習生としての採用からスタートするのが現実的である。

海外人材の受け入れに成功するためには、普遍的価値観、グループ価値観も重要であるが、それ以上に日本人同様、個人の人間性・価値観を理解する必要がある。また、スキルマップなどを活用しながら、求める役割を明確化し、将来のキャリアプランを提示し、長く働いてもらう仲間として受け入れることが重要である。環境面では、指導の担当者や住環境、手当などを整備する必要がある。

 

Session4:M&Aによる人材獲得

株式会社日本M&Aセンター  建設業界支援室 高山義弘 氏

forum2020_takayama日本M&Aセンターが仲介したM&A案件5000件のうち15%が建設業である。人材獲得と後継者不足によりM&Aに取り組むケースが多い。

2019年におけるM&Aのビッグニュースは、トヨタホームとパナソニックホームズの提携。大手でも業界で生き残りをかけるため、競合でなく協調が必要となっている。

2019年のトレンドは、①建設業界のM&A件数は過去最高、②建設市場の好況を背景に売り手の交渉力が強く有利な状況、③大手ゼネコンはM&Aによるデジタルトランスフォーメーションに注力の3点である。

M&Aによる大手への事業承継を通じ、大手のグループに入ることによる採用力アップ、大手のネットワーク活用による新規エリアへの進出、大手との資本受け入れによる経営資本の強化が期待できる。

M&Aを実施するタイミングとして、市場全体が好調で、収益力が高い今が好機であり、準備を今すぐに整えるべきである。M&Aの相手先が見つかるまでは1年以上はかかるため、早い段階での準備が必要である。

M&Aで様々な成功事例が生まれており、大手の経営力を活用するという一つの経営戦略の選択肢として考慮すべきである。

 

Session5:総講 ~結局、経営の質を上げた企業が勝ち残る~

建設産業研究所 建設営業・人材戦略研究室 室長 酒井誠一

forum2020_sakai厳しい時代を乗り越えた40~50歳代社員の価値観に対し、20~30歳代の価値観が変化していることを理解する必要がある。また、大手を中心に、「働き方改革」への対応により就業環境の整備が進んでいくと予測されるため、地場の中堅・中小ゼネコンにおいても、「働き方改革」への対応が急務である。

業界構造の変化により、協力会社の交渉力も強くなっているが、事業を継続し安定的な収益を獲得するため、経営層が中心となって、中長期的な視点で、協力会社を選定し、ネットワーク化とグループ化を進めるべきである。

属人的な能力に依存するのではなく、戦略的に個の底上げと企業の中核人材の育成、組織的な機能分担を図る必要がある。

社員の価値観の変化や業界構造の変化に対応し、優秀な人材を確保・育成し、組織的に経営の質の向上を図っていくことが、人材難の時代に勝ち残るポイントである。

 

参加者の声

参加者アンケートの集計結果では、下表のとおりフォーラムの内容に関連する関心のある経営課題として、「技術者の確保と育成」「現場の生産性向上と業務改善」「新卒者の採用と育成・定着化」「施工部門の休日取得や長時間労働是正」といった、人材の採用・確保と働き方改革に伴う生産性向上について関心が高い傾向でした。forum2020_ank

また、参加者へのアンケートに記載された、ご意見・ご感想を一部紹介します。

  • 大変有意義でした。ありがとうございました
  • テーマ、レジュメ、時間も充実しており、大変良かった
  • 大手建設業も施工監理技術者の不足(40歳代)は考えていませんでした。2~3年先から中堅中小ゼネコンの破綻により技術者の獲得をし易い環境になると考えていましたが、積極的に取り組む必要があると感じた
  • 地方ゼネコンにスポットを当てたフォーラムで、ほかにはなかなか聞けないようなお話を大変興味深く聞かせて頂きました
  • 外国人採用後の教育について、日本語能力の向上が課題です
  • 経営課題に対応すべきヒントをいただきました。ありがとうございます
  • 地道な企業努力による体質改善の必要性を感じました

 

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