ニッコン建設業フォーラム2018 開催レポート

ニッコン建設業フォーラム2018 開催レポート

平成30年2月16日(金)に「ニッコン建設業フォーラム2018」を主婦会館プラザエフで開催いたしました。
今年は、「建設業経営の分岐点 決断の時代 ~我々建設業の経営改革を図るための決断とは~」と題し、建設業を活性化するために重要な”人材が最大限に力を発揮できるようにするための改革”について、技術・営業・人事等、多様な視点からご提言差し上げました。
全国から多くの建設企業経営者にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

次第

主催者あいさつ
株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役社長 清水秀一

1.建設業経営の分岐点 決断の時代 ~我々建設業の経営改革を図るための決断とは~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 加藤浩之

2.特別講演 現場の働き方を変える決断 ~リーンコンストラクションの適用性と将来~
 一般社団法人全国土木施工管理技士会連合会 猪熊明様

3.特別講演 戦う市場を増やす決断 ~地場建設業が行うベトナム進出の道標~
 平岩建設株式会社 代表取締役社長 平岩敏和様

4.特別講演 人材多様化を進める決断 ~女性が輝く職場、外国人の可能性が社会を活性化する~
小川工業株式会社 社長室長 小川幸子様

5.営業戦略の分岐点
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 酒井誠一

6.技術伝承の分岐点
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 丸谷正

7-1.人材活躍(定着)の分岐点 ~“努力や成果が正しく評価され、満足度の高い”考課のしくみ~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 菅原政郎

7-2.人材活躍(定着)の分岐点 ~“成果に直結し、休みが取れる”現場運営のしくみ~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 中西博

8.施工体制の分岐点
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 石原勝信

閉会あいさつ
株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役会長 清水正行

講演の要点

1.建設業経営の分岐点 決断の時代 建設産業研究所 加藤浩之

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  • 建設投資はピークを迎えつつあり、既に地方の企業の業績には明暗が現れている。2025年頃には、建設投資は減少に向かうであろう。
  • 決断するためには、「手段」でなく「目的」を考えることが必要である。「目的」を明確にできた企業が、「決断」を実現している。
  • 「決断」は経営者が行うべき仕事であり、そのための思考の改革が求められる。

2.特別講演 現場の働き方を変える決断 一般社団法人全国土木施工管理技士会連合会 猪熊明様

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  • 「リーンコンストラクション」は、特定の技術ではなく、現場のニーズを元に進める「問題解決型」の生産性向上手法である。製造現場のムダをなくすために、トヨタで大きく発展してきた。
  • リーンコンストラクションを建設現場に効果的に導入するためには、生産環境や作業内容などについて製造現場との違いを見極め、「繰り返しの作業」に注目することが必要である。うまく活用し、成功している建設企業も知られている。
  • まだ先進的企業の取り組みにとどまっているが、適切に導入できれば、リーンコンストラクションは建設技術者の負担軽減につながる

3.特別講演 戦う市場を増やす決断 平岩建設株式会社 代表取締役社長 平岩敏和様

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  • 国内のマーケット、人材不足などの現状を判断し、海外進出を決断した。中でもベトナムは、安定した企業活動を行うための諸条件が整っているため、期待できる国である。
  • 鳶土工の領域では、技能実習生を採用した。また、ジェトロや取引先の支援を受けながら現地で活動し、縁あってベトナムのゼネコンと合弁会社を設立した。現在は、ハノイ・ホーチミンに営業拠点を構えている。
  • 大手や準大手の建設会社ではできないサービスをコンセプトとした、日越での営業活動が実り、ベトナムでの受注実績も増えてきた。海外進出を実現できたのは、社内を巻き込み、地道な努力を続けてきたことの成果であろう。

4.特別講演 人材多様化を進める決断 小川工業株式会社 社長室長 小川幸子様

  • 180216_ogawasama自社として、優秀な人材を獲得するために、人材の多様化が必要であった。女性の現場監督希望者にとっても、就職が難しい現実があった。
  • 女性の現場監督を活用してみると、職場環境改善など、様々な効果がある。女性の得意分野・不得意分野をうまく活かし、社内の不満・不安などの意見を聞きながら、活躍の場を作っている。外国人については、女性以上に考え方の差が大きい点がある。
  • 自社でも様々なトラブルを経験してきた。多様な人材を活用するには、会社全体でコミュニケーションを重ね、互いを理解していく努力が必要である。

5.営業戦略の分岐点 建設産業研究所 酒井誠一

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  • 建設需要が後退局面に向かうと予測される中。今が営業を見直すべき最後のチャンスである。
  • 今後は、「攻めの営業」と「選別受注」を両立させることが必要である。そのためには、何よりも「ターゲット顧客」の量が必要である。そして、顧客の質を高めるために、自社の強みを発揮できる顧客市場を創造する取り組みが求められる。強みを活かして、横展開に成功した企業事例がある。
  • しかし、それを営業部門に任せきりにしていては実現できない。経営者が明確な方針を示し、営業・工事・管理など、組織全体に徹底させる取り組みが必要である。

6.技術伝承の分岐点 建設産業研究所 丸谷正

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  • 現在の建設人材の年齢構成比はいびつであり、10年後に向けて、若手社員の定着化・早期育成が喫緊の課題となっている。
  • 建設会社で、その役割を主に担う40-50代の現場代理人が指導者となるためには、「教えるのが上手」なだけでは不十分である。若手社員に仕事の機会を与え、仕事の面白さを感じさせることも、それ以上に重要である。
  • そして、キャリアパスを設定し、習得状況を確認してPDCAをまわしていく「育成のためのしくみ」が必要である。これらを計画立てて実行し、改善していくことで、「技術伝承を自発的に行っていく組織風土」をつくっていくことができる。

7-1.人材活躍(定着)の分岐点 ~“努力や成果が正しく評価され、満足度の高い”考課のしくみ~
建設産業研究所 菅原政郎

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  • 従来の人事制度には、評価基準があいまいなまま運用されている企業もある。その結果、業績向上や社員の成長に関して悪循環を招いている例が見られる。
  • 人事考課の目的は、社員の賃金などの処遇決定のためだけではなく、経営者が社員に期待する人材像に近づけることにある。上司は、部下の職務の遂行を日常的にマネジメントしていくことで、その目的を達成することができる。

7-2.人材活躍(定着)の分岐点 ~“成果に直結し、休みが取れる”現場運営のしくみ~
建設産業研究所 中西博

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  • 若手の現場監督を中心に、その生産性は必ずしも高くない。その原因は、予定時間通りに業務を進めていくための計画力の無さ、現場の運営体制などの問題が指摘できる。
  • 現場監督が1週間先までの業務計画を見通し、優先すべき業務に集中することで、効率的に生産性向上を実現できる。会社を挙げて、建設現場の昼礼(工程会議)の運営方法などを改革し、協力会社と協力して取り組んでいくことで、双方が利益を得られる

8.施工体制の分岐点 建設産業研究所 石原勝信

  • 多くの建設会社は忙しさに負けて「原価管理を捨てている」。時短の要請も強まり、今後受注が難しくなっていく中で、その「原価管理の甘さ」を残したままでは、建設会社は利益を出せなくなってしまう
  • 「施工単価」は建設会社の競争力である。そのためには、旧態依然とした元下関係から脱却し、協力会社と「請負共同体」として共に努力する必要がある。協力会社を教育し、「施工単価」に競争力を持たせることで、勝ち抜いていくことができる。
  • 利益づくりのための全てのステップを管理していくことで、建設会社は変わる。そのためには、経営者が本気で取り組いでいかなければならない。

参加者の声

参加者へのアンケートに記載された、ご意見・ご感想を一部紹介します。

  • 女性に関しての話を聞くことができたので参考になった
  • 外国人技術者採用及び受け入れについての必要性を理解することができた日頃見落としの多さを感じた
  • 決断のポイントが明確であった
  • 今、建設業を営む各社が抱えている経営課題解決のヒントをご提案いただけた
  • 平岩建設さんと小川工業さんは、実施例で説得力があり理解しやすかった
  • 長時間労働、週休二日制問題への対応
  • 危機感のある話だった
  • 現場のしくみ働き方改革のヒントがみえた