ニッコン建設業フォーラム2017 開催レポート
平成29年2月17日(金)に「ニッコン建設業フォーラム2017」を主婦会館プラザエフで開催いたしました。
今年は、「挑戦の時代、2025年に生き残る建設業経営 ~2025年までの10年間で地場建設企業が実現すべきもの~」と題し、建設業界の重大課題である”生産性の向上”と”人材採用・育成”について、ご提言差し上げました。
全国から多くの建設企業経営者にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。
次第
主催者あいさつ
株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役社長 清水秀一
1.挑戦の時代、2025年に生き残る建設業経営
~2025年までの10年間で地場建設企業が実現すべきもの~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 加藤浩之
第1部 設業の生産性向上の革新に向けて
2.特別講演 情報化施工導入戦略による若手現場職員の早期戦力化
会津土建株式会社 取締役社長 菅家洋一氏様
3.工事部門全員で目指す技術の進化
~取組み目標の数値化によるコスト、生産性、人材育成への挑戦~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 丸谷正
4.協力会社を巻き込む改革
建設産業の課題「生産性」への施工体制改善
~野丁場生産で高品質・高効率な生産システムによる顧客獲得と利益づくりへの挑戦~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 石原勝信
第2部 建設業の人材採用・育成の革新に向けて
5.特別講演 建設業の外国人採用戦略
株式会社淺沼組 執行役員海外事業部長 浅沼章之様
株式会社オムテック 代表取締役社長 後藤泰博
6.トークセッション 日本の建設会社に入社してみて
株式会社淺沼組 ノー・レン・アウン様 (ミャンマー国籍)
株式会社淺沼組 執行役員海外事業部長 浅沼章之様
株式会社オムテック グエン・ミン・ホアン様 (ベトナム国籍)
株式会社オムテック 代表取締役社長 後藤泰博様
進行役 株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 加藤浩之
7.10年先の組織づくりを見越した建設業の人事制度設計
~地域建設業人事は採用・定着・育成の仕組みづくりへの挑戦~
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 酒井誠一
閉会あいさつ
株式会社日本コンサルタントグループ 代表取締役会長 清水正行
講演の要点
1.挑戦の時代、2025年に生き残る建設業経営
建設産業研究所 加藤浩之
- 東北の復興や東京オリンピック等により、最近の受注環境は比較的良いが、これは2020年前後までしか続かない見通しであり、2025年頃には、現在より市況は悪化すると見るべきであろう。
- 「生産性の向上」と「人材採用・育成」については、現在その緊急性・深刻性から大きく取り上げられているが、昔から指摘されていた課題であり、解決が先延ばしされてきた結果に過ぎない。その解決には、従来にない、現在では非常識とも捉えられる程の変革が迫られ、それを「挑戦」という言葉で表現した。
- 「挑戦」には、資金と時間を要する。そのため、現在本業に磨きを掛かることも必要。これからの3年は技術導入、市場開拓、人材確保等に挑戦すべき機会であり、また、今から取り組むことで2025年の新たな競争に備えられる。
第1部 設業の生産性向上の革新に向けて
2.特別講演 情報化施工導入戦略による若手現場職員の早期戦力化
会津土建株式会社 取締役社長 菅家洋一様
- 北陸地方整備局発注の宮古弱小堤防対策工事にて、国土交通省のi-Constructionの全国初の実績を示した。ドローンによる空中地形測量やICTブルドーザーによる土工など、様々なICT技術の有効性を実証した。
- 同時に、地元の高校生を招いた現場見学会を開催し、建設業界の認知向上やイメージアップに取り組んだ。
- これらの活動がメディアに多数取り上げられ、その評判が次の工事受注につながることが期待できる。全国初の実績であったからこそ、大きなアピール効果を得られた。そのため、次の全国初を目指して、様々な分野にアンテナを張り、異業種との協業を行っている。
3.工事部門全員で目指す技術の進化
建設産業研究所 丸谷正
- 建設業の技術向上においては、個人の大きなバラツキなく一定の水準を保ち、全員を少しずつ底上げすることで大きな成果を得られる。
- バラツキを縮小するには、個人⇔現場⇔部門を連動させ、個人の努力の集積が現場の改善の慣習となり、工事部門の組織的な成長につながる。このようなしくみを構築する必要がある。
- そのためには、個人、現場、部門の各活動のPDCAに対してKPI(重要評価指標)を設定し、これらを定量的に管理することが最も有効である。
4.協力会社を巻き込む改革 建設産業の課題「生産性」への施工体制改善
建設産業研究所 石原勝信
- 公共工事に依存する地場の建設会社にとっては、受注量確保のため民間工事への移行は必須であり、その手段=武器として「生産性の向上」が位置づけられる。
- 生産性が低い現場の典型として、目の前の業務を処理することに追われ、適切な利益目標と厳格な原価管理がないまま協力会社に業務を丸投げする例が多く見られる。
- これを改善するために、協力会社を巻き込んだ生産体制の再構築が必要です。
第2部 建設業の人材採用・育成の革新に向けて
建設業の外国人採用戦略
株式会社淺沼組 執行役員海外事業部長 浅沼章之様
- 外国人採用の動機の1つに、従来通り大卒の男性を十分に採用できなくなった、近年の求人状況がある。
- しかし、決して男性社員の補完という消極的な理由で外国人を採用しているわけではない。国籍や性別などに関わらず、基準を満たす者を選考した結果、外国人や女性の割合が相対的に高まったに過ぎない。
- ミャンマー人のノー・レン・アウンも、日本の新卒者と同様に応募し、同じ選考を通じて採用に至った。
株式会社オムテック 代表取締役社長 後藤泰博様
- オムテックの外国人採用の動機は海外進出に不可欠なためであった。
- 現地の事業を担う経営者となり得る人材を基準に、ベトナム人のグエン・ミン・ホアンさんを採用した。
- 高度な設備や技術があれば海外で成功するというのは安易な考え。それらを海外に展開するには、優れた管理者を育成する必要がある。
6.トークセッション 建設業の外国人採用戦略
株式会社淺沼組 ノー・レン・アウン様 (ミャンマー国籍)
株式会社オムテック グエン・ミン・ホアン様 (ベトナム国籍)
進行役: 弊社 加藤浩之
進行役: 日本の建設業で就労する魅力は、どのような点にあるのでしょうか?
ノー・レン・アウン様:
日本にて施工管理技士の資格を取れば、2級であったとしても、アセアン諸国内では非常に高く評価される。日本で学べば、他国でも通用する技術者に成長できる。
グエン・ミン・ホアン様:
ベトナムには高層ビルはないし、地震もない。そのため、これらに関わる高度な技術は日本でしか学べない。
7.10年先の組織づくりを見越した建設業の人事制度設計
建設産業研究所 酒井誠一
- 地場の建設会社では高齢化が顕著であり、人手不足による倒産も十分に起こりえるとの悩みの声を多く聞く。
- 若年層を採用し、定着し、育成するには、女性や外国人なども含めて誰もが働きやすいよう職場環境を整備する必要がある。
- その具体策としては、残業が少ない効率的な働き方、将来の人生設計が描ける賃金制度、成果が正しく評価される人事考課制度などが挙げられる。これらの取り組みを、人事担当者などに任せず、経営者が主導して行うことが、人手不足解消の第一歩である。
参加者の声
参加者へのアンケートに記載された、ご意見・ご感想を一部紹介します。
特別講演「情報化施工導入戦略による若手現場職員の早期戦力化」の参考となった点
- 情報化施工は現在の重要課題であり、参考にしたい。
- 発注者の喜ぶことをする。マスコミを含めた情報発信や、いかに早く情報を得るか、参考になった。
- 菅家社長の経営者としての先見性。
特別講演「建設業の外国人採用戦略」の参考となった点
- 自社と状況が近い事例であった。
- 取り組み内容が参考になった。
- もっと、外国人採用の2名の話が聞きたかった。
“生産性の向上”と”人材採用・育成”は、建設産業に限らず、ほぼ全ての産業において喫緊の課題であり、様々な意見や解決案などが提示されています。
しかし、一般論や他産業の事例は必ずしも建設産業に容易に応用できるものではありません。
そのため、これらの課題について先駆けて取り組み、実績を示した企業経営者のお話は、大いにお役立ていただけると確信します。