教育体系の考え方と立案のポイント

教育体系の考え方と立案のポイント

教育体系立案の考え方

 基本的な考え方

最初に考えなければならないことは、企業としてどのような人材が必要かを明確にすることです。その上で教育計画を作成します。教育基本体系の作成にあたっては、

  • ①トップポリシーの確立
  • ②人材育成の長期的展望

の2要件が前提となります。

これら2要件は組織としての方向を明確にし組織の共通の価値観を醸成していく、いわばバックボーンにあたります。

つまり教育基本体系の作成にあたっては、

  • 目的の明確化
  • 方針の確立
  • 対象範囲の明確化
  • 教育体系の確立
  • カリキュラムの設計

が必要であり、作成された結果は人事制度などとの関連を明確にする必要があります。

また計画の実施にあたっては、①環境の整備 ②制度面の整備 ③組織風土面での環境整備等、全社的な支援・協力体制で進め、特に下記についてはきめ細かく環境の整備を図っていくことが重要です。

  1. 人的環境の整備では、社内インストラクターをはじめとする組織内教育担当者の知識、技術面を強化すること。
  2. 制度面の整備では、各種の資格制度や評価等の制度をつくり、取り組みの動機づけや、手順、方法を仕組みとしてつくり上げていくこと。
  3. 全組織的な盛り上がりを図っていくための成果発表会、トップ層をはじめとする参画システムづくりをすること。

 

人材開発制度からの見直し

人材開発ニーズを具体化し、それを研修として落とし込むには、次の5つの視点を持つことが重要です。

人材開発制度の
主目的
概要 成果のスパン、
対象者、研修方法
代表的な研修
戦力化、
機能強化
組織メンバーとして担当職務や役割を遂行できるように知識・技能・行動様式を習得させる。 ①短期(~1年)的成果
②チーム別、職種別、職務別
③技術、行動(情意部分)重視
④実務直結、効率的育成
  • 新入社員研修
  • マニュアル研修
  • 職能研修、職種転換研修
  • 新任者研修、昇進・昇格時研修
  • 人事評価研修
  • 職場内研修
成長過程の支援
(基幹社員の育成)
組織の中での成長過程の節目に、各人のキャリアアップを支援する。 ①中・超長期的(3~15年)成果
②選抜型、階層別、コース別
③キャリアアップ重視
④タイミング、ステップアップ、継続性
  • キャリアアップ開発研修
  • 年代別研修
  • 階層別(主として若年層)研修
  • コース選択研修
  • ビジネスマインド(計数、マーケティングなど)強化
基礎力の向上 業績との直接的な結びつきよりも、組織能力を向上させる個々人の自発性を重視し、テーマ・メニューを広く準備して対象者も多くする。 ①短~長期(1~10年)的成果
②希望者別、候補者別
③理論、体系的知識重視、基礎技術重視
④予算、テーマ、対象者の分散、拡散
  • 自己啓発支援
  • テーマ別研修(公募制など)
  • 語学研修、情報教育
  • 資格取得研修
  • 外部セミナー
経営テーマ対応
(重要課題解決)
年度や中期経営計画中の主要な経営テーマの実現、課題解決のための行動開発をする。 ①短・中期(数ヶ月~3年)的成果
②部門別、職場別、プロジェクト型
③行動(実践)重視、計画化重視
④集中化(テーマや対象者に集中)
  • 諸制度導入時研修
  • 戦略実行研修
  • 諸課題実践研修
  • 業務改善改革研修
  • プロジェクト型研修
戦略人材の育成 戦略上重要な特定人材の育成を目指し、対象者を選別して効率的育成を目指す。 ①中・長期(3~10年)的成果
②選別、個人別
③行動(実践)重視、計画化重視
④ビジョン追求
  • 国内留学(研究機関、大学院など
  • 海外留学
  • MBAの取得
  • 特定人材のCDP

研修計画の立て方と実施のポイント

研修計画の立て方

具体的に研修計画を立てていく上で必要なことは、教育ニーズの発見すなわち、教育ニーズの調査から始めなくてはなりません。社員の求めている教育、内容および各部門が求めているニーズ、組織全体として求めているニーズを調査し、教育課題の設定にいたります。

教育ニーズ調査を基にした教育課題が決まった時点で研修計画が練れるわけですが、それはまず研修目的の明確化と、研修対象者の枠ぎめになります。
研修目的は、教育課題から導かれて決まりますが、具体的には、

①どんな能力を
②いつまでに
③どのようなことができるようになるまで

現状からレベルアップさせるかを決めることが人材育成のポイントです。つまり、将来必要な人材を想定して、その研修計画を立案することです。また対象者については、年齢、職務経歴、専門性等の他、職制による推薦方式をとるのか、本人応募方式をとるのか、なども決める必要があります。

教育方法の検討

次の問題について十分な検討が必要となります。

  • 知識教育、技能教育、態度教育のいずれに重点をおき、どう組み合わせをするのか。
  • 自己啓発、OJT、集合研修のいずれを中心とし、どういう組み合わせが効率的か。
  • 階層別教育、職能別教育、課題別教育の比重をどうするか、研修対象者の決め方によって、自動的に決定されることもあります。
  • 必須コーすとするか、選択コースとするか、これも研修対象者の決定と関係があります。
  • 基礎コース、専門コースというように、段階的にレベルを高める方法をとるか、あるいは1回にまとめるか。
  • 受講者の取扱に関するもので、費用は自己負担にするか等。