コラム:組織の一員として必要なフォロワーシップのあり方を考える

コラム:組織の一員として必要なフォロワーシップのあり方を考える

~リーダーとの関係構築の観点から~

記事作成日:2020年4月27日 (月)
執筆者:辻村 尚史

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近年、企業内においてリーダーシップ開発とともに組織内の若手~中堅層における「フォロワーシップ」を育て高めようとする動きが目立ってきています。
そこでフォロワーシップとはそもそも何か、また対象となる層の個人には何が必要とされているのかを改めて考えてみましょう。

「フォロワーシップとはなにか」

フォロワーシップの定義

まず「フォロワーシップとはなにか」ということで定義や考え方をみていくことにします。
フォロワーシップの提唱者でもあるロバート・ケリーによれば「当事者意識を持って、組織や上司と協働する意識と行動」と定義づけられています(『指導力革命』プレジデント社1993年)。
「組織改革を始めるのはリーダーであるが、完遂させるのはフォロワーである」とも言われ、フォロワーの、リーダーを支える考え方と実際の行動が重要であると説いています。

フォロワーシップの4類型

ロバート・ケリーはフォロワーシップの理解のため、「批判力」と「貢献力」の二軸によって、それぞれが発現する度合いの大小からフォロワーシップを4つの類型(象限)に分けています。
※ここで言う「批判」とは物事の本質を捉え、迎合せず意見提案することができるという意味での「批判」です。

  1. 「批判力」大「貢献力」大…模範的フォロワー
  2. 「批判力」大「貢献力」小…孤立型フォロワー
  3. 「批判力」小「貢献力」大…順応型フォロワー
  4. 「批判力」小「貢献力」小…消極的フォロワー

実際にはどちらにも中間的な立場として「実務型フォロワー」という類型も想定しており、場面によって5つの類型として使い分けていますが、明確な区別としては4つのタイプのフォロワーシップがある、ということです。

さて、皆さんは上の4つの象限のうち、どこに当てはまりますか?

例えば、あるプロジェクトにおいて上司の立てた戦略に対し「もっとこうすると良くなるのでは?」
という観点から意見を述べることができていれば批判力「大」となります。また実際に提案したものを自ら実践して具体的に行動に移し、成果を挙げていれば貢献度も「大」ということになり、フォロワーとして模範的な状況です。

いかがでしょうか。こういった類型化を活用して、まずは自分が今どの立ち位置にいるのかを客観的に見てみることが大切です。

 なぜ今、組織にフォロワーシップが求められているのか

では、「組織とフォロワーシップの今」として、リーダーとの関係構築という観点から以下2点を考えていくことにしましょう。

  •  なぜ今、組織にフォロワーシップが求められているのか
  • フォロワーシップを発揮するために、個人には何が求められているのか

これまで、組織のあり方を論じる際には「組織をどのように導くか」という観点から、どちらかと言えばフォロワーシップよりもリーダーのあり方、すなわちリーダーシップの重要性が常に説かれてきました。
実際に組織が比較的単一の価値観でまとまっていたり、右肩あがりで成長していたりする時代は、強力なリーダーシップによるトップダウン・アプローチが有効だったと言えます。

しかし現在、これまでのトップ・ダウン的なリーダーシップだけでは立ちゆかない時代になっています。
これまでの正解にあたるビジネスのやり方がそのまま持ち込めない、答えなど探しても唯一のものがない、あるいは参考にできるものがないという変化の激しい時代になっていることは、皆さんも実感されているのではないかと思います。

また、個人の価値観の多様化が進み、­­­リーダーを取り巻くメンバーの考え方も多様になっています。組織の運営を適切に進めるために柔軟性を持って活動し、さらにメンバーの納得をもって進めていく必要が出てきているのです。

8割はフォロワーシップで決まる?

すでに組織のあり方は極めて大きく変化しつつあります。先のロバート・ケリーの調査によると「ほとんどの組織において、成功するリーダーの貢献度は20%に過ぎず、フォロワーは残りの成功の80%のカギを握っている」とされています。
組織においてフォロワーシップの存在がいかに大きいか、ということの一端がここにも表れています。
ではこのような時代の組織における個人には、フォロワーシップの発揮のために何が求められているのでしょうか。

「個人に求められているもの」

 1.自主性

今の時代、特に若手や新入社員にフォーカスして見てみると、周囲の空気をやたらと気にしたり、受け身であったりすることが多いように感じられます。「周囲の方々やリーダーを尊重し、リーダーの意見を立てる」ということはもちろん重要なことです。
しかしこれからは、若手でも自主性を持って、自らが変化をチャンスに変えて掴み取っていく姿勢が求められているのです。

2.土台となるリーダーとの関係構築

変化の激しい時代には『組織として柔軟に活動すること』がより一層重要となると、先に述べました。その中では、適切なフォロワーシップを取るべき人間が、リーダーと対等に活動するためにも
「リーダーをどこまで理解できているか?」
「どこまでリーダーに普段から気持ちを向けられているか?」といった関係構築の濃淡が一つのポイントになります。
皆さんは、皆さんのリーダーについて以下の質問に答えることができるでしょうか?

(1)出身はどこか
(2)大切にしているものは何か
(3)プライベートの顔は仕事の顔と違うか
(4)自分が周囲に支えられていると思っているのか、それとも孤独だと思っているか
(5)本当に自信家なのか、それとも自信がないのを隠しているだけなのか
(6)冗談は通じるか
(7)高い思想や力に仕えているという意識を持っているか
(8)私たちはリーダーのことを親や息子や配偶者のように思えるか
(9)これまでにどんな失敗や悲劇を経験したのか
(10)恐れていることは何か
(11)目標は何か

※『ザ・フォロワーシップ 上司を動かす賢い部下の教科書』
アイラ・チャレフ著野中香方子訳ダイヤモンド社2009年より

 いかがでしょうか。
リーダーの振る舞いをあれこれ言う前に、リーダーの様々な側面を理解しているか。そしてその部分に自分から寄り添う努力をしているか。ぜひ自分自身に問いかけてみてください。

最後になりますが、これからの時代の変化に対応し生き残っていくためにも、組織の一員としての個人には次に挙げる2つの観点がますます必要になってきます。

  • 「自分を知り、相手を知って」対等な活動のための関係をリーダーや周囲と構築すること
  • 組織のために適切に意見を述べ、自ら行動していくこと

当たり前に聞こえることでも、なかなか普段できていないものです。適切なフォロワーシップを発揮できるように準備を怠らず自らを研鑽し、常に自分に問いかけていくよう心がけたいものですね。

関連項目