イノベーション営業とは

第3ステージの営業「イノベーション営業」~顧客に変革をもたらす7つの営業プロセス~

記事作成日:2019年1月25日 (金)
執筆者:原田 明人

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イノベーション営業の必要性

昨今、新聞や雑誌を眺めていますと、GAFAの動向に関する記事が多く掲載されています。GAFAは近年の付加価値の源泉とされるビッグデータを収集するプラットフォームを築き、データを収集、活用した様々なWebサービスを展開し、世の中を席巻しています。近年のビッグデータの活用・Webサービスが主流となる時代では、サービス提供のあり方において、営業担当者が必要なくなると考えられています。

確かに、今後は単なる商品の提供ではWebサービスに代替されていくことになるでしょう。そこで今回は、こうした時代における営業担当者の役割や価値について、考えてみたいと思います。

私は営業担当者の役割には三つのステージがあると考えています。

ステージ1:御用聞き営業

第一のステージは「御用聞き営業」です。

営業担当者は自社の売上向上のために、自社で販売可能な商品をお客様に提供する役割を持っています。商品を提供するためには訪問(アプローチ)し、お客様が欲しい商品を確認し、欲している商品を販売して売上を上げます。

例えば、店舗でベッドの販売をする営業を考えてみましょう。営業担当者は店舗に来店したお客様に対して、展示してあるベッド、あるいはカタログに掲載してあるベッドを見てもらい、お客様が興味を示したベッドについての機能を説明し、購入してもらいます。お客様の『御用(欲しい商品)を聞いて』商品を提供するため、「御用聞き営業」と呼びます。

ステージ2:ソリューション営業

第二のステージは「ソリューション営業」です。

先ほどの御用聞き営業は商品(モノ)をお客様の要望を受けて提供する営業でしたが、ソリューション営業とは、提供する価値の意味(モノ⇒コト)と、提供の仕方(受け⇒攻め)の2つの軸での違いがあります。

同じく、店舗でベッドの販売をする営業を考えてみましょう。営業担当者は店舗に来店したお客様に対して、単にベッドを紹介するのではなくお客様の状況や問題を確認してお客様が抱えている課題を特定します。

例えば、お客様の睡眠の状況を確認することで、『眠りの質を改善させる必要がある』という課題を特定します。課題が特定できたら、その課題を解決するための方法を提案します。具体的にお客様の体格や寝方に合わせて、眠りの質の高まるようなベッドを提案する、などです。

ソリューション営業は、お客様の抱える課題に着目して、課題解決を提案する営業と考えます。

ステージ3:イノベーション営業

第三のステージは「イノベーション営業」です。

ステージ2のソリューション営業は、お客様が抱える問題・課題を解決する営業でした。一方イノベーション営業では、お客様の事業やビジネスの仕方、生活の仕方、考え方などに変革を起こす視点が必要になります。

ベッドの販売をする営業に当てはめてみると、『お客様が潜在的に抱えている睡眠時間の短縮』という課題に対し、『お客様の睡眠時間を短縮して、通常の眠りの効果を生み出す眠り方やベッド』を提案することで、『お客様の時間を創出すること』を価値として提供します。

イノベーション営業は、お客様が持つ問題・課題に対して、お客様の期待を超える付加価値を新(事業)領域・新(ビジネス)プロセスを示して提供することにより、変革を促し、解決させる営業であると考えます。

これからの時代における営業担当者の役割は、ソリューション営業やイノベーション営業が示すような付加価値の提供によって、お客様の問題や課題の解決をサポートする存在であると考えます。

 

イノベーション営業実現に向けたプロセス

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イノベーション営業を行うためには、適切なプロセスを遂行する必要があります。イノベーション営業を実現するプロセスには、下記の7つのプロセスがあります。


  • プロセス1 イノベーション構想

自社の強みとなる保有資源と外部環境の分析を掛け合わせ、イノベーションの種を見つける

  • プロセス2 イノベーション・プランニング

ともにイノベーションを実現する顧客を選定し、具体的な営業活動の計画とダミー提案の作成を行う

  • プロセス3 顧客リレーション

ダミー提案を重ねながら顧客企業との関係を構築し、顧客の意思決定者に対して構想の提案を行う

  • プロセス4 イノベーション資源検証

イノベーションを実現するために必要となる経営資源を洗い出し、詳細に調査と分析を重ねる

  • プロセス5 イノベーション・デザイン

イノベーションの目的・目標を設定し、顧客のビジネスプランやチームを描きその内容を評価・検証する

  • プロセス6 合意・協業契約

計画した内容を顧客企業に示し、契約締結に向けて主要なステークホルダを説得・交渉し、契約に進める

  • プロセス7 開発プロジェクト推進・導入

チームが発足して、プロジェクトが実行段階へと突入し、計画の進捗や活動状況などをモニタリングする


近年、GAFAを中心とした海外のクラウドサービス提供企業が、日本で顧客開拓に力を注いでいます。そうした中で、日本のITベンダー各社は、業種特化の組織を形成し、営業担当・SEが連携して顧客の囲い込みを進め、海外のクラウドサービス提供企業に対抗する姿勢を強めているように思います。

イノベーション営業は社会課題を機軸として、顧客企業との資源融合を推進していくため、
日本のITベンダー各社の戦略を後押しで顧客との関係構築に貢献することが可能です。

しかしそのためには日本のITベンダー各社は、『お客様と共にイノベーションを推進できる営業機能を持ち、7つの営業プロセスが提供する付加価値の創造に取り組むべきである』と考えます。