顧客の“納得”を得るためのクロージング術
記事作成日:2018年9月7日(金)
執筆者:小松 茂樹
「こんなにお客様との関係が良好なのに、なぜ話が前に進まないのだろう」
「こんなにお客様の要望を汲み取っているのに、なぜ見送りにされてしまうのだろう」
「こんなにお客様のことを考えた提案なのに、なぜ受け入れていただけないのだろう」
営業活動をしている中で、こうした思いを感じられたことはございませんか。しっかりとお客様との関係を構築し、仮説を立てて丁寧にヒアリングを行い、提案書をわかりやすく丁寧に作成して、これ以上ないだろうというご提案をしたとしても、話が決まらない時があります。
時には、「まだニーズが把握できていないのか」「まだ提案の内容が弱いのか」と自分を責めたり嘆いたりしてしまうこともあるかもしれません。しかし、どれだけ素晴らしく魅力的な提案であったとしても、契約が決まらないことがあります。その一因として、「適切なクロージングを行っていない」ことが挙げられます。
なぜ、クロージングが必要なのか
クロージングには、
- お客様の不安を解消する
- お客様の背中を押す
という2つの目的があります。
営業活動は提案で終わりではありません。提案内容を説明し、提案書を提出すれば、後はお客様が前向きに検討していただける・・・と思ったら大間違いです。契約に対するいかなる不安をも払拭し、採用して間違いないという確信をお客様が抱かない限り、話が決まることはありません。
営業担当者は、お客様がその状態に至るまで働きかけつづけなければなりません。 クロージングを行わない場合、お客様の明確な意思を確認することなく、「もしよろしければ、ご検討ください」などの弱気な言葉を残して、相手に判断を委ねたまま商談が終わってしまいます。
物事を決めるのは、時に億劫なものです。金額が大きくなればなるほど、決断をくだすのが面倒になります。「後日検討します」「改めて検討します」といった先延ばしの対応になり、時間の経過とともに契約に対して消極的になってしまいます。すると、他人の意見を耳にしたり、他の選択肢を検討したりするなどして、結果として、話は流れてしまうのです。
クロージングを適切に行えば、商談中にお客様の不安を解消し、納得をいただけるようになり、お客様が「その気」になります。納得できたことで契約に対して前向きな気持ちになり、契約後の自分の姿(問題解決やニーズの充足)を想起できるようになるため、お客様は決断をくだすことができるようになるのです。
営業活動では、お客様の「納得」を得られるよう提案の後に必ずクロージングを行う必要があります。
「説得」と「納得」は違う
お客様の納得を得ようとすると、より一層丁寧に、熱心に提案の内容を説明しようとしたくなるかもしれません。
しかし、それは「説得」です。熱心なプレゼンテーションを行えば行うほど、お客様の気持ちが離れていってしまうことがあります。説得はあくまで自分側からのプッシュ、アピールです。どれだけ熱意を持って行ったとしても、提案の良さや魅力を語っているのはあくまでも「自分」なのです。そして、追い込めば追い込むほど、相手は逃げたくなる。それが人の心理というものです。
お客様に納得いただくためには、提案の良さや魅力を、「お客様の口」から語っていただくようにしなければなりません。
他人からの要求に対しては、反発、反論の余地があります。しかし、自分の口から出た言葉であれば認めざるを得ません。「どう考えてもこの提案を採用した方が良いのだろうな」お客様ご自身からこの言葉を引き出せば、もう成功は目の前です。後は、そのご判断に間違いがないという自信を持っていただくよう、どんどん「その気に」なっていただけば良いのです。
自分の口からではなく、相手の口から語っていただく。そのためには、営業担当にはプレゼンテーションのスキルだけではなく、「質問力」が求められるのです。
お客様を「その気」にさせるテストクロージングの進め方
テストクロージングとは、「購入の意思をお客様に打診すること」です。どんなに良い商品、良い提案だとしても、商談中のお客様には常に不安、ためらい、疑念が伴います。
- 「本当にこの商品に決めていいのか」
- 「営業担当はまだ何か隠しているのではないか」
- 「この話にはまだ裏があるのではないか」
お客様に納得いただき、快く購入の意思を固めていただくためには、営業担当はお客様の決断を待つばかりではなく、自ら積極的に意向を打診して、意思決定を促すことが求められます。また、意向を打診することにより、お客様の反応の良し悪しや強弱を把握することができます。
「今どの段階まで来ているのか」を確認した上で、状況に合わせてお客様の不安や疑念を丁寧に一つひとつ取り払っていく。それが、テストクロージングです。
代表的なテストクロージング手法
テストクロージングの代表的な手法を、いくつかご紹介いたします。
二者択一法
導入することは決まっているという前提のうえで、A案にするかB案にするかという選択肢を迫っていく方法です。選択肢を提示されることで、「どちらかを選ばなければならない状況を作り、他の選択肢に目を向けさせないようにすることができます。
例えば、 「お客様がこのパソコンをお買い求めになるとしたら、黒モデルと白モデルのどちらがよろしいですか」と投げかけると、「どちらでもない(買わない)」という回答をしづらくなります。
二者択一法は、アポイントを取る場合などにも活用できます。例えば、「ぜひ一度お伺いさせていただきたいのですが、今週と来週ではどちらがご都合よろしいですか」と投げかけると、「いつがよろしいですか?」と質問するよりも、前向きな回答が得やすくなります。(大抵の場合、先延ばしの心理が働くので、「来週」という回答を得る可能性が高いと言えます)
直接質問法(質問話法)
お客様の抵抗や不安に対して、直接的に質問する方法です。例えば、商品を提案した後にお客様から「検討します」と回答いただいた場合、「何をご検討なさるのですか」「本音としては、このご提案についてどうお考えでいらっしゃいますか」など、話を深掘りする質問を投げかけることで、そこで話が途絶えてしまうとなく、購入に向けた会話を継続することができます。
推定承諾法
導入するかどうかの意思を確認するのではなく、当然導入するものとして話を先に進める方法です。「もし仮に」という前提で、細かな条件面などを一つひとつクリアしていくことで、お客様を「その気」にさせることができます。
「もしこのコピー機をご導入いただくとしたら、フロアのどこに設置いたしましょうか」「定期的にサービスマンから状況報告をさせていただきたいのですが、窓口は総務課の下村様でよろしいでしょうか」などの使い方になります。
また、「仮にこのレーザープリンタをお買い求めいただくとして買い取りになさいますか。それとも、リースの方がよろしいでしょうか」といったように、二者択一法と併せて使用することで、なおパワフルな効果を発揮することができます。
テストクロージングには他にも、『肯定暗示法』『結果指摘法』『要約法』『類推話法』など様々な手法があります。 お客様の疑念を一つひとつ取り払い、「その気」になっていただき、ご納得いただく。売るのではなく「買う手伝いをする」営業担当者にとって、クロージングは成果を大きく左右する重要なプロセスなのです。
クロージング力の向上については、詳しくはこちらからご覧ください。