なんでも相談 【500号】

なんでも相談 【500号】

質問

私は、ある地場建設業の役員です。いま30代後半なのですが、昨年から父の経営する当社に入社しました。今後、5年以内に経営を継承する予定です。しかし、私は施工管理の技術的な経験がなく、営業畑でしたため、先般、民間の建築物件で大きな赤字があったときに、なぜこのようなことが発生し、どうすれば社内をうまくまとめて赤字工事の発生を防止できるの分かりませんでした。

そこで、教えていただきたいのは、経営者として『これから技術を覚えることはできるのか、それとも覚えなくてもよいのか』一般的なことでも結構ですのでご教示願います。

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回答

ご質問ありがとうございます。赤字工事の再発防止は是が非でも検討していかないといけないことです。また、ご質問者様にとってもあと5年という時間の中、その時間をどのように使うか、すべてができないのであれば優先事項は何か知りたくなるのは当然といえます。

まず、結論ですが『技術は覚えなくても経営はできます』

それは幹部すなわち工事部長の能力によります。工事部長が技術的にも見識が深く、かつ、経営的観点をもって経営者に報告・連絡・相談をし、マネジメントを部下に対して発揮できる優れたマネージャーであれば、経営者は技術を覚えなくても、その有能な工事部長に工事部の運営をお任せできるのです。

結局のところ、マネジメントとは部下の統率であり、統率するためには部下の抱える問題解決ができなくてはいけませんから、経営者は幹部が適切に問題を解決しているかを、最上位から見届けるだけで集団を導いていけます。つまり、経営者はすべてのスペシャリストである必要はなく、スペシャリストを雇用できるかが重要なポイントだといえます。

ですが、そのようなお任せできる、優秀な工事部長などいないと言われる中小企業の経営者様のご意見をよくお聞きします。『うちは大企業と違うから』という理屈です。確かに、自律して、優秀なスキルを身に着けようという人材は確率の世界であるといわれます。つまり大企業では出世の競争原理が働くので、切磋琢磨し、優秀なマネージャーが生まれる確率が高くなるのです。つまり裏を返せば、中小企業は、より意識してマネージャーを育てないといけないということになります。

つまり、質問者様は、意識して、ご自身で持っていない技術がある部下を、任せることのできるマネージャー(工事部長)へと育てていくことが必要であるといえます。

それでは、次回はどうやって意識して工事部長を育てるかについてお伝えいたします。ご参考いただけましたら幸いです。

(501号へ続きます)

(回答者)日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 丸谷 正