2018年1月24日

なんでも相談【475号】

2018年1月24日

質問

地方都市地元総合建設業で建築営業担当をしています。お施主(事業主)から当社の見積りが高いといわれます。図面通りの見積りで、機器、資材などはギリギリの額だと説明するのですがなかなか理解してもらえません。お客様と建設コストについて話す際に何か工夫のようなものがあれば教えて下さい。

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回答

ご質問の事例にあるお施主の事業について詳しくはわかりませんので、仮に収益施設などを想定して述べてみたいと思います。

まず、前提として事業用施設には、採算というものがあります。建設投資規模は収益回収による利回りにより決まります。お話に出てきた図面が、この計画に合うものなのか?建設のプロの目が問われるところです。多くの場合、皆さんが目にする図面は実施設計段階にあるものと思われます。ともすると、「おたくで見積るといくらになりますか?」という会話から始まってしまうのではないでしょうか。

受身の営業であれば「お預かりした図面により見積りました」「概算ですが○○億円税別です」となります。すると、「おたくは高い!」と返され、「いやいや内訳では基礎がいくらかかります。鉄骨が何トンかかりまして・・・、資材や労務の高騰もあり・・・」など必至の応酬をすることになります。多くの営業担当者の方が苦慮されていることと思います。しかし、この流れをなんとか変えていかなくてはなりません。そのためには、事業主の立場で考えることをお勧めいたしたいと思います。

VE(バリュー・エンジニアリング)では、「ゼロ・ルック(企画設計段階)」「ファースト・ルック(基本設計段階)」「セカンド・ルック(実施設計・施工段階)」というVE適用段階の考え方があります。現状は実施設計の見積りですので、基本的には施工方法や仕上げ材料に手をつけるのが精一杯です(しかし、ここでも他社と差はでますが)。

事業主は「儲ける(目的)ために施設を手段として作る」のですから、儲かる見積りへ話を展開する必要があります。そのために、現状の図面より上流へ、つまり「ファースト・ルック」する工夫が必要です。他社は実施図面の価格勝負をしても、自社は「お客様の図面ですと収益を上げる部分は○○千万で、収益に貢献しそうにない部分へ○○千万かかっているようです」「投資金額からすれば現状の図面は効率があまりよくないようです」という話の上で、概算見積りの編集に工夫をすべきでしょう。

見積りの構成を工事別でならべて話すのではなく、施設の用途部位(機能)別区分で概算費用を提示してあげるとよいと思います。お施主からは自分の目的と費用の掛り具合が一目で理解できるようになります。「なるほど」「ではここの設備を縮小して収益スペースを増設してみようか」など工事費総価での多寡ではなく、施設の価格で話ができるようになります。以上、見積りの見せ方を経営という視点で編集する工夫を提案させていただきました。簡単にはいかないでしょうが、是非挑戦してみて下さい。

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