なんでも相談【456号】
2017年3月22日
質問
地元で年間10数棟の在来住宅を手がけている工務店です。ピーク時は、20棟を越える時期もありましたが、近隣団地も一巡して、新築ブームも終わり、消費税増税による駆け込みニーズもなくなってしまいました。少なくなっている新築顧客も、「地震に対応できる鉄骨・鉄筋施工」メーカーに行くことが多くなってしまい、最近は特に厳しさを実感しています。
この状況は、うちだけではないと思っていますが、情報源はせいぜい同業者、地域の大工や材料業者くらいです。会話も、「最近仕事がないね」「やっぱり大手は強いね」「俺達の代で終わりだ」等々後ろ向きになりがちです。
自分たちでは中々気が付かないこともあろうかと思います。何か元気な、これからに繋がりそうな事例があったら教えてください。
回答
お話しをお伺いしていますと、先代からの後継で40年近くの実績をお持ちのようです。ということは、年間10棟で実績を試算すると400棟の既存客があることになります。ご存知のように住宅は、一定期間以上住んでいけば普請が必要になります。一般的に、「衣」「食」「住」は生活密着3大要素と言われています。作って終わりではありませんので、顧客とは一生のお付き合いになります。
大手住宅メーカーでは、ビデオやCD等でメンテナンスを気軽に出来るように顧客に渡しています。我々は、その上を行かなければなりません。本体・内装・外装は勿論、配線・配管・什設機器の耐用期間、カーテン・サッシ類の維持、果てはパッキンの交換まで戦うフィールドは沢山あります。「家主の立場でアプローチする」ことをキーワードとして仕事に結び付けている企業が多いので、うち独自の切り口を考えてみてください。
DIY系の店舗では、相談コーナーがいつも盛況です。わざわざ顧客がお店まで来ます。我々は、顧客宅を訪問します。これでは遅れをとってしまうと思うか、「うちが建てた住宅だ、先行しているのはこちらだ、住宅や生活動線の隅々まで知っている」と思うかの違いです。「既存客は宝の山」だと思います。
身近な事例ですが、近年、高齢者世帯が多くなってきており、今後益々増えることが想定されています。そういうお宅をアプローチしても、「老い先が長くない」「息子たちも帰ってこない」「金もないし無駄」と言われるのが普通です。でも、「快適生活」をアピールしている工務店があります。重要なのは、「売りたいアプローチ」から「快適生活を送るためのご提案」を「高齢者の方だけではなく、離れて生活している子供さん達にも理解してもらう」ことではないでしょうか。
企業単独から、自治体や商工会議所(商工会)等イベントへの参加を通じて啓蒙活動をしている企業群もあります。住宅に携わっている我々も、日々年齢・経験を重ねているのですから、より顧客視点でモノが言える立場に近づいていると思いませんか。
最後に、「終の棲家」を謳い文句にしている工務店をご紹介します。木造平屋の2DKタイプを3パターン作り、企画商品として適正価格で出しています。もちろん、高齢者向けとして考慮されています。リフォーム・リニューアル市場ではなく建て替え需要です。
まだまだ考える余地はあると思います。ご参考になればと存じます。
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