2016年9月7日

なんでも相談【445号】

 2016.9.7

質問

地方都市にある建設会社の、工事課長です。ここ数年、新卒社員を継続して採用していますが、若手が育っていないことを痛感します。指導を担当している上司からは、「とても現場は任せられない」という声が多いのです。

ただ、最近、気になる話を聞いています。3年目になる、ある若手社員が「なぜかいつもトンチンカンというか、行動が変だ」というのです。

若手社員には丁寧な指導が必要と考えていますので、「過去の工事資料を渡すだけのような事では指導できない。理解度は確認しているのか。」と念を押しています。

しかし、よくよく聞いてみると「施工計画書の内容は、質問してみると、それなりに理解しているらしい」というのです。むしろ知識は人よりあるようなのですが、ありえないような行動をとったり、まずいことが分かっていてもそのまま見過ごしたりということが目立つとも聞きます。このような場合、どのように指導すれば良いでしょうか。 (前回の続き)

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回答

前回は、頂いた文面から想像して、下記の2つの可能性を提示しました。

(1)「このように行動すべき」という知識に基づいて実行はしているが、それがうまくいかなかった時に調整する方法までは把握していない。そのために、工事を軌道修正してあるべき姿に近づけることができず、焦って突飛な行動をとってしまう。

(2)そもそも、自ら取った行動に対して、派生する問題の先読みや結果発生している問題の発見ができない。そのために、行動すべき時に問題解決のためのアクションが取れない。

第2回では、(2)の可能性について考えてみます。

経験者が検討した結果を見て勉強するのは、効率良く学べる方法ですが、注意すべき点もあります。

標準化した手法には、失敗の防止策など、その手法を裏付ける知恵が盛り込まれているものですが、特に知識も経験もない若手社員のうちは、想定外の事態となる可能性がどれだけあり、その時のロスがどれだけ発生するのか実感することができません。

建設現場で、標準的な手法として認知されていたとしても、「こうしなければならない」「こうしてはいけない」という絶対的なルールは、法律などを除いていくと多くはありません。「現場の条件次第ではありうる」という手法である場合も多いです。

しかしながら、過去の上司などによる「こうした方が良い」というちょっとしたアドバイスが、若手社員の中で「1つの方法」ではなく「絶対的なルール」であるかのような思い込みを生んでしまうことがあります。その結果、本当に構えるべき対策よりも優先してしまうことがあります。

何かしらの思い込みのために、間違った方向に進んでしまったり、余計なことをしてしまったりすると、現場にとっては工期・コスト・時間などのロスとなります。しかし、全くの無駄ではありません。というのも、「思い込みにより間違えた事例」とは、気付けなかった問題を発見し、同時には解決できない複数の問題に対してその危険性を正しく評価し、解決することが必要な事例だからです。これはそのまま、今後に活かせる理想的な指導材料に変えることができます。

どのような「思い込み」があり、常識にとらわれてあるべき可能性に気付けずにいるのか、1つのことについて部下と一緒に考えてみることも有益です。

この時に、上司の方に認識しておいていただきたいことがあります。

経験を積み、ベテランになると、問題発見も問題解決も考えるまでもなく答えを思いついてしまうために、考えるプロセスが説明出来ないということになりがちです。
逆に、新入社員で初めて現場に出た頃は、考えるにも何も材料となる知識も経験も無かったことでしょう。

しかし、新入社員から成長していったいつかの時点で、すぐには答えが出ないものの、現場の状況や様々な資料を整理しながら考えていくうちに問題を見つけたり、それを解決したりできるようになった経験があるのではないかと思います。

答えを示すのではなく、答えを思いつけなかった頃の自分に戻ったらどうやって考えるか、気付けた可能性は本当になかったのか、その兆しはどこに現れていたのか。全てのトラブルについて検証を行う必要はありませんが、是非一度取り組んで頂きたいと思います。

弊社でも、「思い込み」を疑い、問題発見を容易にするための講習会を開催しておりますので、宜しければ受講をご検討下さい。

ニッコンスクール:現場代理人マネジメントプログラム

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