なんでも相談【443号】
2016.8.10
質問
地場ゼネコンの工事部長をしております。近年、若手社員はコミュニケーションが苦手だといわれることが増えたように思います。建設現場での施工管理にあたっては、先輩や協力会社の作業員、発注者などとのコミュニケーションが重要なのは言うまでもありません。しかし、人の話が聞けない、伝えるべきことが伝えられない、うまく会話を続けられない、といった上長からの声が少なからず寄せられています。
会話を苦手とするのは性格的な問題もあるかも知れませんが、人の話が聞けないというのは、若手社員といえども見逃せません。どのようにすれば、社員のコミュニケーション能力を高めることができるでしょうか。
回答
コミュニケーションがうまくいかないのは、必ずしも片方だけの問題とは限りませんが、協力会社や発注者など、社外の方との間で問題が発生しているようであれば、何らかの対策をとることが必要です。
コミュニケーションは、一方的なものではなく、「聞くこと」「話すこと」の両方が必要になりますが、ここでは「聞くこと」ことについて考えてみましょう。
「聞く」には、「聴く」という字を当てることもあります。しかし、「聞く」と「聴く」を並べてみると、全く違う印象を受けないでしょうか。少々回り道になりますが、両者の意味の違いについて、漢字の成り立ちを併せて考えると良いヒントになります。
「聞」は耳を大きく強調した人物の姿を表しています。神様のかすかな声を聞き取るために、耳を大きく強調していることが由来です。そう考えると、「聞く」とは「耳」に重きを置き、情報取得を中心とするコミュニケーションと言えるでしょう。
(なお、「門」は「前代未聞(ぜんだいみもん)」という言葉に使われるように、「もん」という読み方を表していました。)
一方、「聴」はどうでしょうか。まず、「耳」や「心」があり、それに加えて右上に何やら「十」「四」のような形があります。勘の良い方は気付いたかも知れませんが、「四」の方は「目」を表します。こちらの方が人の目に近い本来の形をしています。残る「十」は、「呪術の道具」を表し、「呪力を強めるために眉に飾りをつけ、その強い呪力のある目で巡察すること」を表すとされています。また、「耳」と「心」は、「神の声を聞き、心にさとる」意味とされています。(以上は漢文学者の白川静氏による説で、いずれも諸説あります。)
そう考えると、「聴く」とは、観察力を高めて情報を得て、よく考える、より広い意味でのコミュニケーションと言えるでしょう。
一心に聞くことももちろん大切ですが、同時に考えることは工事現場ではより重要な能力です。近年、ノートを取りながら話を聴くことを苦手にする若手社員も多く見られます。しかし、ノートを取ることで理解度が上がり、不明点も明らかになるため、質問も出来るようになります。ある程度の期間は必要としますが、コミュニケーションの基本スキルとして、是非とも取り組ませたいトレーニングです。
それに加えて、人の話を聴く時、自ら話す時に、どのようなことに気をつければ良いのかを具体的に説明すれば、若手の方は柔軟ですので、習得も早いと思います。
弊社でも、話の聴き方・話し方の基本的なポイントについての講習会を開催しておりますので、宜しければ受講をご検討下さい。
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