2016年7月23日

なんでも相談【442号】

 2016.7.23

質問

地元で、土木(完工高1億円)、住宅(完工高3億円)の企業で、管理部門(総務・経理全般)を任せられている58歳の男性です。

年齢も年齢なので、そろそろ管理部門の後継準備をしたいと考えていますが、社長に理解をしていただけません。何か良いアドバイスがありましたらお願いします。
管理部門には、自分以外3名のパート・アルバイトがおり、各々総務・人事給与処理、原価処理、経理処理を分担してもらっています。

7~8年前迄は社長の奥さんが資金繰り関連を担当されていましたが、今は自分が代わりを務めています。パート・アルバイト者は、2~3年後ごとに「家庭の事情などで辞めていく・補充する」を繰り返しています。今回も、1名が辞めることになったこと、自分自身も60歳に近づいてきたこともあり、[次の世代への交代・育成を含めて正社員の採用]を上申いたしました。

ところが、「今の体制で十分やれているではないか。何故そんなところにあらためてカネをかける必要があるのか分からない」「定年?2年も先だろう?その時に考えれば良いではないか」でした。

ここ数年、社長が経営判断をしやすくするために、業務に精通した社員がいなくても資料は揃えられるようにしましたが、「作った仕組みは、取りまとめる者が、意味が分からないとただの数字の羅列であり、理解できるまでの準備期間が必要」であることを訴えても、「仕組みが出来ているのだから1カ月も引き継ぎをすれば十分。君は難しく考え過ぎだよ。今、定年は65歳から70歳の時代だよ。あと10年はこのままで良い」と耳を貸していただけません。

本音を言いますと、金融機関への説明、資金繰り折衝等でへとへとの部分もあります。もう少し責任分担もあると楽なのですが。

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回答

地方の中堅・中小建設業者では同じような悩みを持たれているところが多いようです。先日も、地方の10億円弱の企業で、ハローワーク経由で事務職を採用していました。「簿記経験者優遇」で採用された方が、商業簿記経験者でした。勤まらないのでと一週間で辞めてしまいました。応募する側の問題もありますが、面接の時に、「建設業経理事務士」の確認をしないと言う、採用する側の問題はもっと大きいです。地元で10億の企業ですからそれなりの位置付けです。

ご相談の件ですが、パート・アルバイトでも役割を明確にしているようですので、人が2~3年で入れ替わるのでしたら、なおさら「役割分担表・職務分掌」的なものは準備しているものと思います。

情報の流れは、基本、入口(営業、施工)があり出口(管理)があります。

①毎日、意味を理解しないまま、無機質に伝票を記票し、元帳に転記する。PCに入力すると月次集計・年間集計・決算書が自動的に出力される。

②お客様から、こんなお家が欲しい、諸条件を聞いて、見合うものをご提供する。その対価としていただいたお金を最終処理していく。施工中は、材料購入や協力業者に施工をお願いする。これだけ営業や現場で頑張ったから、これだけ利益が残った。入金・支払いは締日通りに処理した。最終報告を経営者にした。

①と②の差は、仕事の全体像を知っている・知らないの差です。えてして、仕事をいただく部門(営業)、仕事をこなす部門(施工)が重要視されがちな業界です。しかし、ご相談者は「情報の重要性」をご存知です。であれば、もう一歩進めて、「業務標準化」を文書化してください。

業務フローチャートはその最たるツールです。これを作成するポイントは、判断記号です。P-D-C-A管理サイクルの「C:検証」機能を誰が実施しているかを明確にします。すると、「これだけの重要なことを○○部長に任せている」ことが良く分かります。

一般的には、金融機関に出向いて、金策をするのは管理部長の役割と思いますが、先を見据えて、説明責任と頭を下げることは経営者の仕事ではないでしょうか。もしかしたら、社長の役割が一番不明確かもしれません。

これで先ず、管理部門の勉強会を開いて皆さんと共有化しましょう。次に、経営者に、「経営幹部会議で勉強会することを提案」します。その時に、サブツールとして、部門別の年齢構成表を添付することをお薦めします。現在の体制が、あと何年続けられるか、です。我々が考えている以上に、少子高齢化が進んでいるものです。60歳、65歳をゴールとしてシミュレーション表を付けると、営業・施工部門は相当慌てます。これからは、「全部門で後継者育成」が必須条件となります。

経営者に理解してもらえなくても、営業幹部・施工幹部のおしりに火が付くはずです。人事の採用・予算案(投資計画)や人材育成計画は管理部門が把握しているはずですから、突っ込みどころは満載です。

管理部門は少数精鋭の社内モデルと言っても過言ではありません。是非一歩踏み出してみてください。

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