なんでも相談 【525号】

なんでも相談 【526号】

質問

当社でもネット情報等を参考にしながらインターンシップを実施していますが、実際の採用につながっていないのが現状です。地域の建設会社の事例でどんな取り組みをしているか効果的な事例を教えてください。

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回答

御質問ありがとうございます。

インターンシップは優秀な学生と早くから関係を構築できるなど、採用戦略において、主戦場の一つとなっており、御質問者様も重要性は肌で感じられているかと存じます。特に、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)の改正により、一定の基準に準拠(詳細は後述)するプログラムであれば、そこで取得した学生情報を採用活動開始後にも活用可能となりました(従来は禁止)。尚、この改正は2023年時に大学3年生となる学生以降が対象となります。この改正により、インターンシップが、採用に直結する取組となり、今後益々採用戦略で重要なチャネルとなる事が容易に考えられます。

一方で御質問者様のように「インターンシップが採用につながっていない」と悩まれる会社様は多くいらっしゃいます。

  • インターンシップに参加した学生から応募が来ない
  • カリキュラム内容が他社と似たようなものになってしまう
  • ターゲット人材へインターンシップをどう案内していいのか分からない

と、このような原因によりインターンシップが採用に結びつかないと悩まれている会社様は多いように感じられます。では、建設業においてインターシップと採用を結び付けるには、どのようなポイントがあるか、弊社が御支援させて頂いている会社様の事例も踏まえ提言させて頂きます。今回は採用に結びつける為にインターンシップカリキュラム作成のポイントにフォーカスし、多くの人を呼び込む等母集団形成のポイントについては別の機会に解説させて頂きたいと存じます。

まずは結論として、インターンシップは5日以上の長期期間で行い、カリキュラムは奇をてらわず現場作業を中心に設計する事をお勧め致します。理由は下記の通りです。

1.法改正の視点

前段で記述した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)の改正です。本改正ではインターンシップ内で収集した学生情報を採用活動に活用できる条件として、最低でも5日間以上、専門領域では2週間以上と実施期間の要件が付されています。

2.学生の満足度の視点

インターンシップカリキュラムの満足度と実施期間は相関関係にあり、実施期間が長期になるほど満足度が高くなる点です。「職場の雰囲気」は「事業内容」と共に学生が重視している要素ですが、1~2日で理解するのは非常に難しいものです。相手への好意は会う回数が多ければ多い程、増えていきます。従業員と接点も増える長期インターンシップにより自社への理解度も高まり、採用への効果も高まる事が期待できます。

3.大学視点

最後に、大学の「インターンシップ単位認定プログラム」との関係があります。建築・土木学科のある大学では登録している企業でインターンシップを実施した場合、他科目と同じように単位を認定する制度を設けている学校が多くあります。大学側でカリキュラムや事業者情報を精査して登録している事に加え、インターンシップに参加する事で単位が取得できる為、日々忙しい学生に重用されているプログラムです。事業者側から見ると、ターゲット人材に近いリードでアプローチができる、相対的に民間の就職媒体よりも競争率が低い等のメリットがあります。単位認定するインターンシップとして「5日以上のカリキュラム」「夏季休暇に実施」等を条件として定めているケースが多い事もポイントです。

 

実際に、1か月以上の長期に渡るインターンシッププログラムを、土木学科のある大学の単位認定プログラムとして登録し、毎年インターンシップ経由で採用実績を上げている建設会社もいらっしゃいます。カリキュラム内容はICT等の先端技術は特別取り入れていません。新入社員と同じように、現場に配属し同じような仕事をさせています。カリキュラムで特異な点は、1か月以上の長期期間プログラムである事、大学の単位認定プログラムである事の2点です。

インターンシップ経由で入社された社員に話を伺うと「従業員だけでなく、協力業者と話をする機会があり、学校では学べない雰囲気を感じる事ができたのが入社に繋がった」「1か月以上、社員と同じような仕事を体験し、職場の雰囲気も分かったので、今更他企業に応募しようとは思わなかった」等、実際の仕事体験、関係者との関りの深さが入社に繋がった事が分かります。

以上のようにインターンシップを採用に繋げるポイントとして、まずは長期間のプログラムを形成してみる事を提言致します。実際に仕事をしてみないと分からない、関わってみないとどんな人間か分からない。採用に関わらず、新しい出会いや変化には、大なり小なりこのような意見が多く見受けられるかと存じます。学生から社会人へ大きな決断を迫られる就活生も同じです。新しい環境へ期待もある一方、会社の雰囲気に合うか、仕事は自分の技量で処理できるか等多くの不安を抱えています。それら不安を、長期的なインターンシップを通じ関係性を構築する中で払拭し、事業者と学生の信頼関係を構築していく事がインターンシップを採用に活用する一番のポイントになると存じます。

(回答者)
日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 羽上 元気