なんでも相談 【519号】
質問
当社の営業エリアでは今のところ営業案件の数は減ってはいないのですが、現場担当者の人数が限られる中、どの案件を狙って取りに行くかという基準がなく、結果的に受注しやすい案件から受注したり、利幅の少ない案件に人を取られたりしています。他社はどのように受注の基準を決めているのでしょうか。
回答
受注基準についてのご相談ですね。これは非常に難しい問題です。
例えば、社長がひとりですべて決めるのも、意思決定がスムーズになり、むしろ基準も重要ではないといえるでしょうが、基準をもって、しくみで組織を動かすことは、「社長、見積書完成しましたが、この物件、いくらで取りに行くかご判断ください」という、いわゆる考えない組織からの脱却には必要なことといえます。
受注基準の事例として、基準は概ね5つです。優先順位は企業により変わりますが、ニッコンでは①→②→③→④→⑤の順をおすすめしています。
①収益性
つまり、利益率です。目標となる利益率(額)は損益分岐点から定まります。もちろん、土木・建築など工種によっても変わりますし、案件の規模や内容(官か民かなど)でも変わります。但し、多くの企業が生産性の目安も付け加えています。生産性=利益額/月 などで表します。たとえば、代理人ひとりあたり250万/月です。古来から、建設企業では、完工高が技術者ひとりあたり1億といわれてきましたが、今日では、より正確な指標を設定する企業がでてきたといえます。
②現場代理人のスケジュール
現場代理人の空きスケジュールは限られた人数で経営をしている企業にとっては非常に重要な要素です。根幹にあるのは、1億円規模の案件と2億円規模の案件を比べたときにそれほど技術者にとって仕事の量(手間)が変わらないということです。そのためにも、現場代理人の空きスケジュールに、最大限の規模の案件を“みっちり”詰め込んでいくことが求められます。これは営業部門も連携して、早期の案件情報獲得を行うと、スケジュールはさらにみっちりとなるといえます。①と②をあわせて行うことを、『選別受注』といいます。
③顧客との将来性
営業的にその顧客との将来性を図ることは重要です。将来性は、継続性・案件規模・相乗効果の3つの要素で成り立つといえます。
・継続性とは、頻度高く案件が発生するかという点です。顧客の事業規模に関わってくるといえます。頻度高い顧客はアカウント顧客(いわゆる太客)と呼ばれます。
・案件規模とは、1件あたりの案件の大きさです。これは顧客の事業内容に関わってくるといえます。
・相乗効果とは、その顧客の案件を行うと、工事実績として同様の業界の顧客からもお声がかかるものです。建築であれば、例えばホテル・病院などがいえます。
④回収条件
これは、顧客の与信の側面と、回収条件です。現金回収のリスクともいえます。
⑤難易度
施工難易度によるリスクです。施工時や竣工後の品質トラブルのリスクや安全災害リスクの高さです。
ご参考いただいて、例えばいまあなたの会社で稼働している現場にこの指標をあてはめたらどうなるか分析してみてはいかがでしょうか。
(回答者)
日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 丸谷 正