建設経営への道標【485号】
2018年6月27日
原価管理に関するルール・基準の明確化 第3回
建設業において原価管理手法として適用されている実行予算制度・管理が形骸化しているということは大きな問題であると考えます。その原因として、①原価管理における役割分担が曖昧である。②工事担当者の原価意識が薄い。③原価管理に関する目標設定が曖昧である。④実行予算作成のタイミングが遅い。⑤実行予算作成に関するルール・基準が曖昧である。といったことが挙げられます。
この形骸化している現象を打破しない限り、原価管理の本質を見出すことは難しいでしょう。建設業が、本質的に考え、実行しなければならない原価管理のあり方を考えてみます。
原価管理意識の向上
(2)外注費を一式で原価管理するドンブリ勘定
もう1つのドンブリ勘定は、外注費という科目で原価を管理しているというドンブリです。「ある工種の外注費がオーバーした」という場合には、これだけでは何が原因で予算オーバーしたかを判断することは難しくなります。 そのオーバーした原因を把握するためには、外注費を材料、労務、経費などの要素別に分解して捉えていれば、原因分析がより具体的になります。
つまり原価管理においては外注費を材料費、労務費、経費に分解して、予算作成し、さらに予算と実績の対比もそれぞれの要素において実施することが大事になります。さらに外注費を要素別に分解して管理するときに、次のような役割分担も重要です。
【一括金額】
- 外注費:1,000,000円
【分解金額】
- 材料費:200,000円(管理:購買部門)
- 労務費:700,000円(管理:工事部門)
- 経費:100,000円(管理:購買部門)
この役割からいえることは、工事担当者は外注費の中の労務に関する部分において管理責任を有することになりますから、工事担当者は労務部分に関する歩掛データを現場において採集し、そのデータを実行予算管理、工程管理に反映する役割をもつということになります。
(3)求められる原価管理に対する評価制度
以上述べてきたように、原価管理(実行予算管理)を実施するに当たって、金額ベースで実施するというドンブリ勘定と、外注費を一式で管理するというドンブリ勘定を排除することが極めて重要です。
また、コストダウンヘの対応においても、実行予算を組むのが精一杯でとてもコストを縮減する余地がないとか、発注金額を押えると協力会社が逃げてしまうなどと考えてコストダウンヘの意欲があまり見受けられず、その取組みにおいて腰が引けてしまっているところも見受けられます。
工事担当者がこのように原価意識が比較的薄く、コストダウンヘの取組みに消極的になっている原因としては、彼らに対してのコストダウンの目標数値が必ずしも明確に設定されておらず、また目標達成に対する信賞必罰が曖昧になっていることなどが考えられます。
したがって、このような問題を解決するためには建築・土木・設備それぞれの工事特性に合わせてより具体的なコストダウン目標を設定し、その達成度を評価しながら、賞与・成果配分などによって報いていくという制度なども充実させながら、工事担当者に対して原価管理に積極的に取り組ませるという“ヤル気”を醸成する工夫も必要かと思います。
(つづく)
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