建設経営への道標【480号】
2018年4月11日
競争力のある積算システムの確立 第7回
建設業の積算業務における主な仕事は、受注を獲得するための手段である「見積書」を作成するということにあるわけですが、見積書を作成したからといって、受注が必ず取れるという性格のものではないわけです。最近では、この受注成約率が著しく低下している傾向にあります。特に民間建築工事では、この受注成約率がわずか1割、あるいはそれ以下という厳しく悲惨な状況が続いています。
したがって限られた体制・時間の中で、少しでも多くの「見積書」を作成することが、今後より一層、厳しく要求されることになっていきます。そのため、発注者から図面・仕様書の依頼を受けたり、見積依頼を受けてから「見積書」を提出するまでの時間に余裕がほとんどないのが現状です。そのために、迅速かつ正確に「見積書」を作成することが要求されています。
さらに前述したように「見積書」を作成すると同時に「標準予算書」を作成する必要にも迫られています。これらの多様かつ重要な要請を実現するためには、積算システムを合理的に構築し、かつ運用できるような工夫も大事になります。
この合理的な積算システムを構築するためのポイントを、2つほど上げておきます。前回は、積算業務のコンピューター化についてお話しました。今回は見積単価の整備についてです。
3.合理的な積算システムの構築のポイント
2.見積単価の整備
積算業務の機械化と同時に、見積及び標準予算作成に必要な標準的な見積単価を整備し、それぞれの単価をコンピュータに記録しておくと、常時に正確で、新鮮な情報を活用することができます。また、それらの情報を共有化して複数の「見積書」及び「標準予算書」を同時に作成できることになります。この見積単価は、建築工事用と土木工事用に分けて整備するほうが、当然より便利になります。建築工事の場合は外注単価が主体になりますから、業種別(:TI種別)かつ要素別に、さらに発注先別(官庁・民間など)に何通りかの単価を分けて運用するのがより実用的です。
上木工事の場合は、役所の持つ歩掛と対比が可能な代価方式にし、工種別かつ要素別及びその現場の土の状態に応じて何通りかのランクを設定した単価を持つことがより実用的になります。
以上のような合理化を実施しながら、限られた要員体制において競争力があるより適正な見積単価(製造原価)を駆使して、迅速かつ正確に「見積書」及び「標準予算書」を作成する仕組みを整備・確立することが他社に勝つための大事な戦略のひとつになります。
(終わり)
※掲載記事の無断転載を禁じます。