建設経営への道標【476号】
2018年2月14日
競争力のある積算システムの確立 第3回
営業・購買・工事部門が、情報提供などによって積算部門を支援するという仕組みを充実させることが、極めて重要なことになります。そのために、まず、積算機能のあるべきフロー図を作成します。自社設計見積もりと他社設計見積もりなどの業務フローを作成するとよいでしょう。積算機能として強化すべき基本的な業務の手順を『業務内容』として、左方向から列記していきます。『業務内容』の上段に『インプット』、下段に『アウトプット』の欄を設け、インプットのところでは、中央の『業務内容』を実施するために必要な情報、資料など記入するとともに情報提供者(部門)を付記します。また、アウトプットのところでは、『業務内容』により作成・提供される情報、資料などを記入していきます。このようなフローが出来上がりましたら、これに基づき営業・購買・工事部門などの支援を受けながら、運用に入りますが、積算部門をより有効的に機能させるために、いくつかのポイントをあげてみましょう。
2.積算システム運用上のポイント
2.原価基準を明確にする
見積単価(製品価格)の根拠になる製造原価において、その基準値を整備する必要があります。発注者はより適正(高品質が維持されていること)でより安い価格を期待しているわけですが、ここで気をつけなければならないことは、より安い価格であると同時に、それが品質として適正であるかとうかを要求していることです。
現在よく見かけるのは、積算・見積をする担当者の工事経験の有無や、その担当者の考え方の違いによって、同じ工事物件であってもその見積金額にかなりの差が出ていることです。これでは発注者の信頼を損なってしまう危険性があります。
このようなことにならないためには、受注者の誰が積算・見積しても、発注者の信頼が得られるしっかりした企業として標準化された製造原価を備え、それを根拠にして見積単価が設定されていることが重要です。
しかし、このような製造原価を整備するには、積算部門(あるいは積算担当者)の努力だけでは不可能なことで、コストセンターとして機能している購買部門・工事部門の協力が、絶対不可欠のことになります。
まず、製造原価を標準化するためにはそれぞれの工事現場における実績原価がベースになるわけですから、工事担当者が材料、労務、現場経費に関する実績データを収集し、そのデータを集中管理する仕組みをつくることが必要です。
このように、現場で収集された原価実績データを蓄積し、そのデータの適正度を分析しながら標準化する業務は、「あるべき姿」としては工務部門、あるいは購買部門に持たせることが考えられます。
このときにさらに重要なことは、原価実績データとして材料などの購入金額(単価)はいうまでもなく、材工一式で発注している外注全額(単価)についても、その実勢(業者に支払っている金額)金額を正確に把握することです。さらに外注金額(単価)の場合は、その発注の根拠になる技能工の工数も、同時に把握することです。すなわち適正な工数に裏づけされた単価を標準化し、その数値を基準とする見積単価(製品価格)として位置づけることです。
(つづく)
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