コストマネジメントを支える機能について

建設経営への道標【456号】

2017年3月22日

コストマネジメントを支える機能について=第2回=

建設業において原価を管理し、コストダウンを具体的かつ確実に実践することによって、粗利益(または付加価値)を確保・創出する仕組みを、「コストマネジメントシステム」と定義づけしましょう。このコストマネジメントシステムには、基本的に次の4つの機能(役割)が必要とされています。

  1.  積算機能
  2.  原価管理機能
  3.  工務機能
  4.  購買機能

このそれぞれの機能の内容については、土木・建築・設備工事業といった業種、施工高を中心とした企業規模、その企業における組織体制、更にそれぞれの企業特性(地域、元請・下請の比率など)によって変わってきます。それぞれの機能について、標準的なものとして1つのビジネスモデルを想定することができますが、建設業としての基本的役割、機能定義、あるべき姿について、ここでは述べてみたいと思います。今回は、「原価管理機能」についてです。

2-1「原価管理機能」の役割

「原価管理機能」が基本的に持つべき役割としては、次のようなものが考えられます。

  • 各種情報(単価、歩掛、業者、VEなどに関する情報)によって、指示原価を達成するための具体的な実行予算を作成する。
  • 設計変更・追加など発生時において予算書を修正し、実行予算管理 (計画実績対比)を行ない、目標達成への改善策を計画・実行し、利益管理を行なう。
  • コストダウンとなる要因(発注条件・致量・歩掛など)を検証・分析し、目標達成へ向けた活動を管理することによって、コストダウンとなる実績データを収集・分析を行なう。
  • 外注費を材料・労務・経費などの要素別に分解した予算管理を行い、 協力会社の施工実態と整合性の取れた請求処理(支払業務)を行なう。
  • 原価計画と整合された施工計画(品質・工程・安全)を作成、管理するとともに、コストダウンへ結びつく改善策に取組む。

2-2「原価管理機能」の機能定義とあるべき姿

原価管理機能は、大きく分けると「施工準備機能」「予算作成機能」「予算管理機能」「情報管理機能」の4つになります。

(1)施工準備機能

本機能は、担当者の人選機能、現場調査機能、施工方針決定や実行予算作成機能、あるいは施工品質計画書、内部計画書などを作成する機能等のことです。

(2)予算作成機能

本機能は、予算作成に必要な単価、歩掛などの情報収集機能、予算目標設定機能、実行予算書作成機能、実行予算を検証する機能等の機能のことです。

3)予算管理機能

本機能は、実行予算管理表に基づく予算管理機能、粗利益の管理機能、予算の増減、あるいは予算と実績を対比する機能等のことです。

(4)情報管理機能

本機能は、現場の特性を考慮した条件を工事発注条件書(仮称)に明記する機能、ロス、歩掛を考慮して発注数量を算出する機能等のことです。

原価管理機能として考えられる細かい機能と、それぞれの機能に関する機能定義(仕事の内容)及び、あるべき姿(それぞれの仕事における最も望ましい姿)の1例として、「情報管理機能」を取り上げたいと思います。

機能 機能定義 あるべき姿
中項目 小項目
情報管理機能 特殊条件設定機能
  1. 工程・品質・原価・安全に関して、現場の特性を考慮した条件「工事発注条件書」(仮称)に明記する
  1. 工程・品質・安全・原価などに関する特殊な条件を的確に把握し、その条件が「実行予算書」及び「工事発注条件書」に反映されている。
発注数量設定機能
  1. ロス率を考慮して発注数量を算出する機能
  2. 歩掛を参考にして発注数量を算出する機能
  1. 施工数量を根拠にして、必要な項目においてロス率に関する数値の収集・分析を行ないながら発注数量が算出されている。
  2. 外注費の中に含まれる労務歩掛に関して、標準化されたものを考慮しながら発注数量が算出されている。

 

(つづく)

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