コストマネジメントを支える機能について

建設経営への道標【455号】

2017年3月8日

コストマネジメントを支える機能について=第1回=

建設業において原価を管理し、コストダウンを具体的かつ確実に実践することによって、粗利益(または付加価値)を確保・創出する仕組みを、「コストマネジメントシステム」と定義づけしましょう。このコストマネジメントシステムには、基本的に次の4つの機能(役割)が必要とされています。

  1.  積算機能
  2.  原価管理機能
  3.  工務機能
  4.  購買機能

このそれぞれの機能の内容については、土木・建築・設備工事業といった業種、施工高を中心とした企業規模、その企業における組織体制、更にそれぞれの企業特性(地域、元請・下請の比率など)によって変わってきます。それぞれの機能について、標準的なものとして1つのビジネスモデルを想定することができますが、建設業としての基本的役割、機能定義、あるべき姿について、ここでは述べてみたいと思います。まず今回は、「積算機能」についてです。

 

1-1積算機能の役割

「積算機能」が基本的に持つべき役割としては、次のようなものが考えられます。

  • 会社の要求する利益を確保するために、市場価格に適合した競争力のある単価・価格を設定する。
  • 原価管理システムと整合した見積業務を標準化する(原価管理科目と見積科目の統一、ITの活用など)。
  • 現場の調査・各種計画の実施・採用単価の精査を行い、精度の高い「原価予測」を行う。
  • 顧客・他社・技術・工法などの情報を入手・活用し、受注拡大に結びつく原価計算書(標準予算書)を作成する。
  • 受注対象になっている物件の契約内容を反映させた「標準原価」と、会社が求める利益を考慮した「指示原価」を工事部門へ明確に伝える。

1-2「積算機能」の機能定義とあるべき姿

積算機能は、大きく分けると「戦略設計機能」「見積業務機能」「見積作成機能」「見積調整能」の4つになります。

(1)戦略設計機能

本機能は、市場や顧客に対応した競争力のある標準単価を整備する機能と会社が要求する工事別の粗利益を設定する機能等を指しています。

(2)見積業務機能

本機能は、見積業務を標準化し、現場調査、仮設計画のチェック・立案する機能や見積計画作成、見積単価整備及び見積単価の妥当性の検証等を行なう機能のことです。

(3)見積作成機能

見積書を作成、標準予算書を作成・修正する機能、見積チェック、見積情報の収集・蓄積・活用等の機能を指しています。

(4)見積調整機能

見積においてVE提案する機能、品質・原価・工程・安全に関してVE提案する機能等のことです。

 

積算機能として考えられる細かい機能と、それぞれの機能に関する機能定義(仕事の内容)及び、あるべき姿(それぞれの仕事における最も望ましい姿)の1例として、「戦略設計機能」を取り上げたいと思います。

機能 機能定義 あるべき姿
中項目 小項目
「戦略設計機能」 「営業戦略設計機能」
  1. 『より良いものをより安く』という市場・顧客の要請に適合した価格を決める機能
  2. 工事別に粗利益の目標を設定する機能
  1. 市場・顧客に適合した価格を設定するための、競争力のある標準単価を整備する。
  2. 会社が要求する粗利益と工事種類、構造、用途別の粗利益実績を根拠にして、基準粗利益が設定されている。

『機能定義』というのは、それぞれの機能として考えなければならない役割として捉え、その先にこの表にある業務(仕事)が存在することになります。「あるべき姿」というのは、機能定義において表現している役割(仕事)を将来は、ここまで追究していこうという到達点というかゴールに相当する内容で、“あるべき姿”が厳しいと思われる場合は、こうありたいという表現に置き換えて考えてみても良いでしょう。

(つづく)

 

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