儲ける ための10カ条

建設経営への道標【449号】

2016年11月24日

儲ける ための10カ条 =第3回=

経営者の悩みは儲けることが難しいということです。儲けるためには、原価管理をきっちりやりたいと考え、工夫しながら管理方法を確立しようとしています。しかし、「始めに管理ありき」ではなく、「始めに人ありき」なのです。ここに「儲けるための10ヵ条」 を挙げてみました。

  1. 施工単価内訳をつかむ。
  2. コス トダウンに生きがいをもつ 。
  3. 一人ひとりの知恵を共有化する。
  4. 行動計画を標準化する 。
  5. 発注者との折りあいをよくする。
  6. 社内コミュニケーション、いわゆる報告 連絡   相談をよくする。
  7. 実行予算を自分流に分解し、日々の収支を知る 。
  8. 先を読んだ段取りに慣れること。
  9. 情報 、ノウハ ウを積極的に吸収する。
  10. 会社業績に関心をもつ。

448号では1.~6.まで解説しました。それでは残りの解説をします。

7.実行予算を自分流に分解し、日々の収支を知る

何度も繰り返すようになるかもしれませんが、実行予算とは、この工事をこのくらいの原価でやるという意思表示です。そのシナリオが、実行予算の中に書いていなければいけません。

シナリオは作った。しかし、いまそのシナリオのどこまでドラマが進んでいるのかわからないということでは困ります。日々の収支、1日、今日はどれくらいの仕事をした、いま今日の仕事の分だけお金をもらうとすると、いくらになるんだろうということを常に把握して、最終的にこの工事はいくらの原価がかかるのかを予想できるという訓棟をしていかなければいけません。

現場に対して本当に利益を出す人、出さない人を比べたときに、出す人は「ここの現場の問題点は何ですか」「いくらぐらいの予算がかかりますか」「こういう問題が生じたときは、どういう対処をしますか」などと質問されたとき、テキパキと具体的な数字を入れて答えることができます。そういう人は工事全体をだいたい知っているということになります。ということは、現場にかかるお金も知っていて当然でしょう。そして、あとで結果を見ても、予定以上の利益を出しているというケースが多いようです。

実行予算は、白分流でかまわないからとにかく分解しておくことです。ここからここまでいって、だいたいお金はこれくらいであれば儲かるといったことを把握することです。また、日々の日報にも自分でノートにつけていくと、聞かれたらすぐに収支状況が答えられるようになるのです。こういった習慣は、是非、身につけでおくべきでしょう。

8.先を読んだ段取りに慣れること

儲かるか、儲からないかというのは、先を読んだ段取りに慣れているか、慣れていないかの差といっていいでしょう。前述のようにベテランの所長だと、1ヵ月先、そして完成までの流れが、ずっと頭のなかにシミュレーションができます。

次のような質問をしましょう。あなたはその工事の着工前から、着工したとき、施工巾、1ヵ月後、2ヵ月後、完成したときとずっと頭のなかに描いて、どの時点で工事のヤマ、つまり大切なポイントが来るかを説明できますか。いま現場を担当している皆さん、一度,ずっと目を瞑って考えてみて下さい。

まだ新入社員の人は明日のことで頭がいっぱいに違いありません。2~3年の経験の人も、せいぜい1週間先が限界でしょう。10年選手で1ヵ月先ぐらいかもしれません。しかし、それから先はどういう流れになっていくのか、よくわからないと思います。これは自分自身の訓練によって向上するものです。

例えば、「1ヵ月先には梅雨がくる、ということは水の量はいまはこれだけだが、ひょっとして大雨が来ると、水位はこのあたりまでくるかもしれない。とすると、いまのコンクリート打設は1ヵ月後までにここまで打っていないと被害は大きくなる。では,重点的にそこを天気のいい日にやってしまう、というように工事のヤマを察知して、早目の対策が計画できるでしょう。

9.情報 、ノウハ ウを積極的に吸収する

雑誌、人の話、他の会社、現場などに関心をもって、どんどん見にいく、または写真に収めておく、といった意欲がなければ、儲けることにはつながりません。

若い現場担当者が通勤の途中で、たまたま他社の現場を見かけました。すると、おもしろい仕事をやっていました。「こういうやり方もあるんだな」とヒントを得た彼は、さっそく自分の現場でもやってみると、利益の向上に大きく役に立つ結果になりました。

そのとき、主任は「彼は前向きにやってくれてるよ。彼のアイデアを聞くと、思わずわれわれもやりたくなってしまう」というように前向きの姿勢は周りの人まで影響を与えるものです。そうすると「今度は,この足場の量を少なくしてみよう」とおもしろさは増してくるのです。

現場担当者は技術屋です。「こうしたら,どうなるんだろう」と現場で実践して、その成果を話し合えるような、そういった雰囲気づくり、または個人の努力、さらにその努力を評価する仕組み、といったものを作っていきたいと思いませんか。

10.会社業績に関心をもつ

これにはこういった例があります。ある会社で経営者が、「今年はみんなよくやったから、冬のボーナスはうんとはずむよ」と11月ぐらいに公表しました。

それからしばらくして、本来、利益の柱になるような工事で大きな失敗をして、赤字になりそうな状況になってしまいました。結局 、2,000万円の赤字が出てしまいました。経営者はボーナスを払う時期になって「OO現場で大きな失敗が出て、申しわけないが、期待どおりのボーナスが出せなくなりました」と社員の前で頭を下げました。

一人ひとりの社員には「今年の冬は…」と大きな期待があったわけです。しかし、その期待は無残にも消えてしまいました。現場担当者一人、失敗した人を責める前に一人ひとりが会社の業績に関心をもって、もし自分の現場でこのような失敗をしたら、会社の業績にどのような影響を与えるのかを考えて行動することです。

失敗しても取り返しのつくもの、あるいはこれをミスしたら金額的に大きいもの、それがはっきり区別できるように皆さん、一生懸命に現場を預かるのだから、足を引っぱる、引っぱりあいをすることを避けて貢献しあうようにしなければいけません。

貢献してその分、皆で業績を上げ「もっともっとボーナスをもらおうじゃないか」という方向に変えていくことです。

それには,会社の業績にもっともっと関心をもつことです。それも一人ひとりがです。そして経営者側も、そういった業績に関してオープンにしながら、社員に報告していくことです。社員と会社経営が一体になれば、儲けるための強い仕組みができ上がるはずです。

以上が、『儲けるための10ヵ条』です。このようなことを、皆さんの会社、皆さんの立場でどのようにできるか考えてみて下さい。

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