ウソのような本当の話し

建設経営への道標【444号】

2016.8.22

ウソのような本当の話し 第3回

さまざまな現場がある。何十年も工事を担当していると、思いもよらない出来事に遭遇したりする。笑い話になりそうなこと、信じられないことなど、さまざまである。工事は生き物であり、人の人生と同じだ。二度と同じものはできない。それは、条件、時期、人が、大きく入り交じって、ひとつの結果を出しているからだ。変化する現場、そこから、建設工事への愛着と奥の深さを味わってみよう。

一夜で道路の上に橋ができた!!

「昨日、ここを通ったときは何もなかった。今日、ここに橋がかかってしまっている。いったいどうなっているんだ!」。道行く人々は首を傾げていた。

だいぶ昔の話にはなるが、東北新幹線の建設が盛んな頃、国道をストップして橋梁工事をするわけにはいかない。そこで、押し出し工法というものを活用したときに起こった驚きである。

この押し出し工法はヨーロッパから導入された。原理は、字のごとく、ところてんのように、つくった橋をどんどん押し出していくのだ。鉄骨の橋をつくる場合、この施工は以前からよく見られたが、コンクリートの橋になると当時は前例がなかった。

すぐれた設計力を使うと、どれくらいの長さまで張り出した状態でバランスを保つことができるかがすぐわかる。それはちょうど、物差しを机の角に差し出した状態と同じで、重心が机の上にあれば物差しは落ちないのと同じである。さて、道路の脇で橋をつくり、橋を持ち上げる油圧ジャッキにより、1時間に3~5m押し出していく。このようにして、夜中に、道路の上に、20mものコンクリートの橋が突如として現れたのだ。
建設の工法はさまざまである。その工法の原理は素人の人たちが容易に理解できるものが多い。言い換えると、身近なヒントがすぐれた工法を生んでいると思ってよい。

(つづく)

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