建設経営への道標【440号】
2016.6.22
ウソのような本当の話し 第1回
さまざまな現場がある。何十年も工事を担当していると、思いもよらない出来事に遭遇したりする。笑い話になりそうなこと、信じられないことなど、さまざまである。工事は生き物であり、人の人生と同じだ。二度と同じものはできない。それは、条件、時期、人が、大きく入り交じって、ひとつの結果を出しているからだ。変化する現場、そこから、建設工事への愛着と奥の深さを味わってみよう。
マンションのベランダを北側につくってしまった!!
周囲を山留によって閉ざされると、人は方向感覚を失ってしまう。一方、「こうだ」と思い込んでしまうと、人はそれに疑問をもたなくなってしまう。この2つが見事に重なり合って起こってしまったことが、この話である。
本来、マンションは南側にベランダがある。この担当者も、地下工事をしているとき、図面を見てそれを頭に入れていた。しかし、「こちらが南」と、基礎の墨出しのときに思い込んでしまったことから、この失敗は起こってしまった。
建物が北、南、逆になって地上に顔を出したとき、その担当者は顔面蒼白で声も出なかった。気が付いてもよさそうなものだが、夢中でやっていると、これに近いことはよく起こる。ダブルチェック(別の視点からもう一度確かめる)をすることが、これを防ぐ方法だ。
このような失敗を一度経験すると、技術屋は強くなる。ちょっとした失敗を教訓として次へ生かすからだ。
ちなみに、この例では途中、設計変更により何とか格好をつけた。しかし分譲するには価値がなくなり、自社の社宅として利用することになった。
また類似例として、ある住宅会社において、隣の家を間違えて解体してしまい、結局、2棟を新築するはめになったものもある。古い家なので、取り壊して新築するはずが、似たような古い家が並んでいたのだ。これは監督の指示のあいまいさ、地図で充分に確認していなかった不手際が原囚である。
考えつかないミスは意外に多いものである。
(つづく)
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