原価管理に関するルール・基準の明確化

建設経営への道標【486号】

2018年7月11日

原価管理に関するルール・基準の明確化 第4回

建設業において原価管理手法として適用されている実行予算制度・管理が形骸化しているということは大きな問題であると考えます。その原因として、①原価管理における役割分担が曖昧である。②工事担当者の原価意識が薄い。③原価管理に関する目標設定が曖昧である。④実行予算作成のタイミングが遅い。⑤実行予算作成に関するルール・基準が曖昧である。といったことが挙げられます。

この形骸化している現象を打破しない限り、原価管理の本質を見出すことは難しいでしょう。建設業が、本質的に考え、実行しなければならない原価管理のあり方を考えてみます。

原価に関する目標管理の明確化

原価管理をより具体的に実施するためには、その達成すべき目標を工事別にかつ個人別に明確に設定することが重要ですが、その目標が曖昧である企業が多いように見受けられます。目標数値として実行予算作成時の原価率(裏返しの位置にある粗利益率)が考えられますが、この原価率を85%(粗利益率15%)と企業全体としての目標と捉らえ、さらにこれを、例えば部門別に建築部門は88%(粗利益率12%)、土木部門は82%(粗利益率18%)という形で設定している企業はあります。しかし、このような数値設定では、工事別さらに個人別の目標数値としては大雑把すぎます。

建築に関係する工事でいえば、その物件が木造かS造かRC造かといった構造によって原価率が変わってきますし、同じS造であっても、その建物が共同住宅かあるいは工場・倉庫、店舗といった非住宅かによってもそれぞれの原価率は変わってきます。さらに、その物件が新築か増改築かによっても、原価率は違うはずです。

土木に関する工事においても、それが道路改良工事か下水道工事か河川工事か、また舗装工事かといった工事の種類とか、土質などからくる工事の難易度などによっても、その原価率は変わってくるわけです。

それぞれの工事の特性に合わせて、目標とする原価率を設定しないと極めてお座なりの目標になってしまう可能性があります。こういった工事の属性を根拠にした目標設定と同時に、個人の属性に応じた目標を設定することも大事です。

すなわち、各個人の現場経験年数であるとか、現場の掛け持ち度などによってもそれぞれの目標数値を設定しないで、企業レベルあるいは部門レベルの大雑把な目標にしてしまうと、実行予算管理において目標が達成できなかった時に、工事担当者に言い訳の理由を与えてしまうだけになってしまっているという場面もよく目にします。

(つづく)

※掲載記事の無断転載を禁じます。