2018年3月24日

なんでも相談【479号】

2018年3月24日

質問

「原価企画」という言葉を聴くことがありますが、建設業界ではどのような運用がされているのか簡単にポイントを教えていただけますでしょうか。

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回答

もともと、原価企画という考え方は昔からあり、特に製造業では一般的な考え方ともいえます。まず、原価企画公式というのがあります。 「売価-利益=原価」というものです。つまり、製品の売価は市場価格で決まり、その売値で利益を含め製造しなければ生きていけないということです。言われてみれば、当たり前のことです。しかし、この式は実現しようとすれば、製造業でも大変なことです。

まず、営業が数字に責任をもたなければ成り立ちません。見込み生産であれ、受注生産であれ、決めた目標は必ず実現するという責任があります。その意味で、営業(販売)が強い企業でしかできないと私は思います。

建設業での「原価企画」は、製造業と基本的な公式は共通しますが、ビジネスモデルが違うので、簡単に横へ移動するというわけにはいきません。そこで、建設業における、原価企画公式を使いご説明します。

「①戦略請負金」-「②必要利益」=「③許容原価」となります。

まず①「戦略請負金」です。

建設業は、販売する製品はありません。請負毎の工事があるだけです。一つとして同じものはないのです。工事入札に対して、競争があり、客先と建設会社の密着の度合いがあります。「特命」か「競争」かの違いです。この違いは、前施工、協力などの要素で違うでしょう。そこで、いかに他社より有利な条件を作れるかが勝負です。その意味で、他社より有利な条件が作れるか、営業段階での会社の力における差が「戦略請負金」となります。

次に②「必要利益」です。

工事を取得してから、利益を出すのでは、既に経営になっていません。会社は出る経費は事前にわかっています。そこで、経費を賄う利益は結果から賄うというのは、あまりにも「どんぶり」です。工事を取れば利益が出た時代の幻想です。利益は工事の取り方で決まります。従って、原価企画では、工事益は受注前に決めておきます。この利益は、不変です。利益を変えないとすれば、変えるのは、「受注額」と「原価」です。

ここで、③「許容原価」が重要になります。

②「必要利益」が不変なのですから、①「請負額」か③「許容原価」を変更するしかないのです。つまり、営業段階が最も重要です。そして、営業と工事が、ばらばらに仕事をしていれば、「必要利益」は実現できないのです。

私どものコンサルティングでは、まずこの一見利益が相反する問題の解決を、営業部門と工事部門に投げかけながら、仕事の流し方から改革をすることをご理解いただいています。細かいことは多数ありますが、基本公式をどのように実現するか全社を挙げて研究することが必要だと思います。

 

 

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