建設経営への道標【478号】
2018年3月14日
競争力のある積算システムの確立 第5回
営業・購買・工事部門が、情報提供などによって積算部門を支援するという仕組みを充実させることが、極めて重要なことになります。そのために、まず、積算機能のあるべきフロー図を作成します。自社設計見積もりと他社設計見積もりなどの業務フローを作成するとよいでしょう。積算機能として強化すべき基本的な業務の手順を『業務内容』として、左方向から列記していきます。『業務内容』の上段に『インプット』、下段に『アウトプット』の欄を設け、インプットのところでは、中央の『業務内容』を実施するために必要な情報、資料など記入するとともに情報提供者(部門)を付記します。また、アウトプットのところでは、『業務内容』により作成・提供される情報、資料などを記入していきます。このようなフローが出来上がりましたら、これに基づき営業・購買・工事部門などの支援を受けながら、運用に入りますが、積算部門をより有効的に機能させるために、いくつかのポイントをあげてみましょう。
2.積算システム運用上のポイント
1.利益を考慮した単価を設定する
詳細は【475号】をご覧下さい。
2.原価基準を明確にする
詳細は【476号】をご覧下さい。
3.購買部門と連携する
詳細は【477号】をご覧下さい。
4.事前原価計算としての機能を有する
原価管理の手法として、実行予算制度が導入されてから相当の年月が経過していますが、この実行予算制度が本来の目的を達成しているとは思われないことがいくつかあります。
1つは「実行予算書」を作成するタイミングが遅すぎることで、もう1つは実行予算管理が厳密に実施されていないことです。後者については原価管理に関することになりますから、後で触れたいと思います。
前者の実行予算書作成のタイミングについてですが、企業規模及び工事規模の大小に関係なく、全体的に予算書の作成が遅すぎるように思われます。
企業によっては、工事着工前に予算書が提出される割合が極めて低く、あるときは工事が進捗してかなり経ってから予算書が作成されたり、はなはだしい場合には、工事が終わる頃になってから、ようやく予算書が提出されてくるというケースも見かけられます。
こういった状況では、予算書としての役割を全く果たしていないということになります。そもそも「実行予算書」の目的は、着工前にその工事が竣工した時点でどれだけの利益が確保できるかを予測することにあります。
この予算書において、期待する利益が出てこない場合には、さらに原価を圧縮して会社が期待する利益に近づけるための検証書類になるわけですから、どのような事情や理由があっても、工事着工前に作成するということが鉄則です。
それが、担当者が多忙なために実行予算を作成する時間がとれないとか、あるいは工事担当者が未熟なために、しっかりした実行予算書が組めないということがあれば、それらの問題を解決する取組みを工事担当者に要求するのではなく、会社として問題解決を図り、着工前に必ず実行予算書を作成する体制をつくるべきなのです。
その解決の1つの方法が、「見積書」を作成すると同時に「標準予算書」を作成するという事前原価計算的な仕組みを確立することが考えられます。
このとき作成される「標準予算書」は「見積書」作成に適用している製造原価と、図面から拾い出した数量を根拠にして計算する予算ですから、そのまま現場運営段階で使用できるものではなく、予算としての基準数値というか基準案として考えられるものになります。
したがって、工事担当者はこの「標準予算書」を基準にして、数量及び現場環境などを検証した上で、予算の修正をした実質的な本来の予算としての「実行予算書」を作成するということになります。
こういう対応を図ることによって、工事着工前に利益予測が可能な実行予算を把握できるという大きなメリットが得られます。すなわちこのような仕組みを作ることによって、積算部門にプロフィットセンターとしての責任を持たせ、コストセンターに対し原価管理の基準数値となる「標準予算」を明示するという役割を明確にすることになります。
(つづく)
※掲載記事の無断転載を禁じます。