2017年3月8日

なんでも相談【455号】

2017年3月8日

質問

ピーク時には、10数億円まで仕事量を増やした地元の土建業ですが、ここ2~3年、7~8億円と低迷しています。公共工事の発注状況も悪くなったし、もともと主だった産業もなかったこの地区では、民間仕事もこれ以上増える見込みがないように感じられます。それでも、経営者としては、手をこまねいているわけにはいきません。時々経営者仲間から聞こえてくるのは、「都市部へ進出すれば、オリンピック需要や、職人不足等で仕事は廻ってくる」というお話しです。ただ、身近な企業の中には、大臣許可をやめて都市部から撤退(出先の閉鎖)してきた企業もあります。なかなか本当のことを知る機会はないのですが、「利益が出ないからやめた」が一般的な話しです。実態はどうなんでしょうか。参考事例があればお教えください。

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回答

地方での疲弊状況は、よく耳にします。近年、地方部での地震災害や土砂災害、豪雨被害等でご支援をされている建設業者からも、「今、仕事がいっぱいあるように見えるが、実態はそうではない。本来すべき公共工事や民間工事の発注状態が芳しくないところに、たまたま地域で起きてしまった災害を最優先しているだけ」と不安視している声です。

そうは言っても、次の世代につないでいかなければならない地域建設業にとっては死活問題になりかねない状況も続いています。都市部に支出した2事例をご紹介します。

一つ目は、地元で10数億規模の土建業と不動産業を営んでいる企業です。

都市部に土木事業で進出するには、短期的に成果が出づらいとのことで、先に不動産部門がアプローチしました。土地を手配し、条件付で宅地分譲や商業ビルを建てていくイメージです。物件は多々あるのですが、土地の相場が地方では考えられないような価格帯ばかりです。それでも、近隣相場を見ながら仕入・分譲していきました。間違いなく完工高が上がっていき、本社の売上に近づいてきました。ところが、途中から資金繰りが大変なことに気が付きます。加えて、粗利がさっぱりあがりません。原因は初期投資や売れ残り、在庫期間の長期化等です。このときの教訓は、「目利き」でした。地元であれば、商品である土地の価値はほぼ分かるのですが、都市部で仕入れる土地は、その地域に根付いている業者の方が格段ノウハウを持っています。5年、10年その地域に根付いてきてようやくそのことが理解できてきたところです。原価では、近隣対策が大変です。これも都市部ならではのことですが、隣りとのスペースが殆どないための対策、重機類の稼動範囲の限定化、騒音・通報等余計なところに経費が掛かってしまいます。

もう一つは、設備系専門工事業者です。

ピーク時は7~8億実施していたのですが、現在は2~3億規模になってしまいました。分離発注という特権を活かして公共・民間両方がバランスよく廻っていましたが、箱物行政が終わった段階から完工高は急降下でした。たまたまお世話になったゼネコン・所長から、「東京の流通店舗をやってくれないか」という話しがあって、半分赤字覚悟で現場対応したら、「このくらいの仕上がり(工期・価格)で施工してもらえるのであれば、まだ何件かあるよ」と高評価でした。「東京の業者はスキルレベルも高いだろうから儲からない」と思っていたのですが、結構肩を並べられる技術・技能でした。

その後、技術者を地元から東京に転勤・常駐させ、現在では、地元の数倍の完工高になるまでになりました。当初心配した技術的なことは、都市部も地方部もほぼ変わりませんが、技能系の労務単価の差は相当あります。それも、「このレベルの技量でこんな単価?」と驚く場面が多々ありました。今現在は、協力企業(労務外注)の動員力や、技量・力量での使い分けが課題として気をつけています。

2事例の紹介でした。既存市場から新規市場に打って出るわけですから、慎重に構える必要もあります。重要なことは、「市場に対する判断を的確に行う」ことだと思います。[自社が何を持って戦うか]を再度ご検討いただければと思います。

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