2017年2月8日

なんでも相談【453号】

2017年2月8日

質問

首都圏の中堅建設会社に勤めています。現場所長になり約7年ですが、施主とのコミュニケーションにストレスを感じます。現場で部下や協力会社の職長等とのコミュニケーションに問題はないです。むしろ得意な方だと周囲からも言われます。しかし、施主とのコミュニケーションとなると違います。極力わかりやすく、丁寧に、何度もこちらの事情を伝えてはいるのですが、なかなかわかってもらえません。どこに問題があるのでしょうか?

arrow-orange

回答

現場での部下や協力会社を相手とする対内コミュニケーションと施主や発注者との対外コミュニケーションは性質が全く異なります。まずこれを認識しなければなりません。

現場所長として対内コミュニケーションは、あくまでも自身の方が優位な立場であり、経過において様々な意見交換があったとしても、最終的な意思決定は自身が行いその結果を相手に伝えるものであるため、指示・命令といえます。

一方、施主や発注者との対外コミュニケーションは交渉です。互いに立場が異なる者同士が利害を調整しながら、妥協点を見出さなくてはいけません。相手の合意がなければ終わらないのです。これが指示・命令とは大きく異なる点であり、ストレスの原因であると考えられます。

では、自社の利益を確保しながら円滑に施主や発注者と交渉するためにはどうすればよいのでしょうか?それは、互いに利害が様々に異なる中で、利益が一致する点を見出しwin-winの協力関係を築くことです。自身の都合だけを一方的に話しているだけでは、その内容がどれだけ合理的でわかりやすくても、対立関係を生み交渉がうまく進みません。しかし、協力関係を築いてしまえば、後は詳細の条件を詰めるだけなので、円滑に進みます。条件を詰める作業自体は楽ではないですが、それは対内コミュニケーションも同じであり、特別にストレスを感じることはないでしょう。

次に、win-winの協力関係を築くための交渉術とはどのようなものでしょうか?それには確かな手法が複数存在し、学習と実践によってスキルとして身に付けることができます。

例えばFAIBEという提案手法があります。

  • 提案の特徴(Feature)、
  • その特徴の利点(Advantage)、
  • 相手の興味(Interest)、
  • 提案を選択することで得られる具体的な利益(Benefit)、
  • 以上の証拠(Evidence)

これらを系統立てて説明することで、交渉相手との合意を得るという手法です。

具体的な使い方は、「この床材の変更案として、・・・を提案します(提案の特徴)。この製品を採用すると、滑りにくくなります(特徴の利点)。この建物では、高齢の方も多く使用されるので、事故防止の効果も高いですよね(相手の興味)。そうなると、利用者も増えることが期待できます(利益)。製品詳細につきましては、こちらの資料に記載しております(証拠)。」のようになります。

対内コミュニケーションは得意ということは、自身の考えをわかりやすく伝えることや相手の考えを引き出すこと等の、基本的なコミュニケーションスキルは高いと思われます。そのため交渉スキルの習得も困難ではないので、一度研修等で手法を学習することをお勧めします。

※掲載記事の無断転載を禁じます。