なんでも相談【449号】
2016年11月24日
質問
杭施工の偽装のような問題の発生は会社の信用力に大きな傷を付けることになります。我が社でも問題を発生させないために現場担当者へ厳しく指導をしていますが、ここ数年現場から「書類が忙しくて…」と施工管理の問題が挙げられます。書類作成は組織で応援するなどの対応を取らなければならないのか悩んでいます。
回答
書類自体が「成果物」として作成しなければならない、という考え方になってしまっているような気がします。我々の「成果物」とは、構築物としての責任品質が守られて、顧客のニーズをかなえた「良いもの」のことです。書類とはその「良いもの」を作るために必要な計画書や確認書、証明するための根拠資料という、建設工事の目的の2次的なものに過ぎません。
良いものを提供し、それを証明するためには書類は必要な道具であることは間違えありません。しかし道具は道具、どんなに良いものを目指し時間をかけて作っても主役の構築物がどうなのかが重要な問題です。
こんな例も考えられます。
コンクリート打設前に現場担当者が地中梁の配筋検査を行うと、図面では@100で施工しなければならないスターラップが@150で組みあがっていた。すでに型枠も組まれていたため、その担当者は検査の黒板のピッチを150に書き換えて現場施工が正しいという書類にしていた。
施工管理とは正しい構築物を作るために、不具合がチェックされたときには「やり直させる」ことが本来取るべき行動であるにもかかわらず、上記の例では構築物の品質は横に置かれて、きちんとした(?)管理資料を作成することになっています。まさに、主役を取り間違えた書類主義は建設業界の偽装の原因に成り得ると思います。
書類が忙しくて現場運営で成果を上げる活動(品質管理、原価管理、工程管理、安全管理)が十分にできない。よく耳にしますが、良いものを作り上げるための脇役の書類は工事を始める前の段階に十分に検討されて用意するのが基本です。書類が目的になっている傾向から、後から作りこむようなことがあるのではないでしょうか。つまり、実際の管理が後手を踏んでいることが考えられます。書類が忙しくて… ではなく、書類を適正な時期に作って無いことから夏休みの宿題のように書類に追いかけられて、辻褄合わせに労力をかけているとも考えられます。
どこの会社の部長さんたちも「今は書類が忙しくて現場は大変だ」と言いますが、書類作成を手伝うのではなく、現場が後手を踏まないようにタイムリーな組織審査のような指導体制(組織による実践教育)が必要だと思います。
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