ウソのような本当の話し

建設経営への道標【441号】

2016.7.13

ウソのような本当の話し 第2回

さまざまな現場がある。何十年も工事を担当していると、思いもよらない出来事に遭遇したりする。笑い話になりそうなこと、信じられないことなど、さまざまである。工事は生き物であり、人の人生と同じだ。二度と同じものはできない。それは、条件、時期、人が、大きく入り交じって、ひとつの結果を出しているからだ。変化する現場、そこから、建設工事への愛着と奥の深さを味わってみよう。

究極のリサイクルで大幅コストダウン!!

かつて30年ぐらい前のことになるが海外工事が盛んな頃、日本の現場技術者は海外現
場で従事することが多くなった。ある大手ゼネコンも東南アジアに進出し、持ち前の技術を世界の企業を相手に披露していた。

そのなかで、地下鉄の駅舎工事を担当する技術者がいた。既存のアパート部を解体して、そこに駅をつくるのである。

現場に乗り込んで着工準備をしながら、この解体工事をしなければならない。たいへん忙しい時期であった。日本でお馴染みの仮囲いを早くしなければ工事が 進まない。周囲200m余りをいかに合理的に仮囲いするかを、その技術者はみんなと検討していた。

知恵はいくらでも出てくるものである。思いもかけないアイデアが出てきた。それは、解体するアパートのドアを利用することだった。出るは出るは、何百枚もの同じ大きさのドアが色とりどりの板囲いに生まれ変わった。

歩道を歩いている人たちは、びっくりしたように並べられたドア(仮囲い)を見ている。すばらしい光景だ。建設工事は、現場条件を生かすといくらでも作業が工夫されることを物語っている。

発注者から「オーワンダフル」と絶賛された。ところが困ったことが出てきた。すべてのドアに取っ手(ノブ)がついているため、本当の出入口がわからなくなってしまうことだ。開かずの扉が何百枚もあり、何度も取っ手を動かさなくてはならない。その様子を見ていると滑稽であった。

(つづく)

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