2016年7月13日

なんでも相談【441号】

 2016.7.13

質問

東北にある、土木施工管理者3名と作業4班体制で、元請・下請含め3億円弱の土木会社です。地域土木仕事を細々と実施していましたが、東日本震災後、復旧・復興工事対応で若手職人を5名ほど増員しました。

場数を踏むことによって、その若手達が何とか育ってきましたが、ここ1年程の間に、班長候補者が3名、次々と辞めていってしまいました。本人達に理由を聞くと、「仕事は面白いのですが、家族から毎日帰りが遅くていい加減にしろと言われた」、「土日の休みがなくて子供が可哀相だ」とか、「毎日遅いのに給料はこれだけ?○○さん家はもっと貰っている」とのことでした。

給料は世間並みに支払っていると思いますが、仕事時間の拘束は確かにその通りかと思っています。ただちょっと気になることがありました。残っている若手メンバーから小耳に挟んだのが、「A君は、△△建設から○○万円を提示されたようだ」ということでした。これはもしかしたら引き抜きかと思い、懇意にしている同業他社の経営者にそれとなく聞いてみると、「うちも先日、□□建設に1名やられた」という話しでした。どうも、地域老舗企業にではなく、新興企業に転職しているようです。

せっかく育ってきた若手にどんどん辞められるのは、下手をすると会社の浮沈に係わってきます。何とか歯止めをかけたいのですが、何か良いアドバイスをお願いします。

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回答

せっかく育てたのに・・・というお気持ち、お察しいたします。
就労条件・待遇面が、100%満足できる環境で仕事が出来れば最高ですが、そのような職場には中々巡り合えません。たまたまちょっと芽生えた仕事場や会社に対する不満・疑心暗鬼、その隙間を狙って甘いささやきがあれば、気持ちがぐらつくこともあります。ましてや、やり直しがきく20代の若手です。

今後、同じようなことがないよう、注意すべきところを上げてみました。次の二つの切り口で検証・対応してみたら如何でしょうか。

一つ目は、人間関係です。施工部門(班)の体制、特に施工班は、現場の状況によって班編成が小刻みに変わることが多々あります。その時に、仕事に見合った生産性の高い職人の組み合わせを前提として組分けますが、得てして性格の合う・合わないで成果が上がらない場面が出てきます。酷いときには、現場で言い争いになることもあります。この組み合わせを古参の職長・職人と話し合いをしながら進めてもらいたいと思います。

この延長上での組織的問題です。現場に直接関わらない施工管理者(経営幹部)が、工程進捗会議(打ち合わせ)等で横から口をはさむことです。必要であれば、事例アドバイス程度のことはあっても良いのですが、どうも力ずくのパターンが多いようです。班長(職長)も困るでしょうし、それを見た若手の組織人としての芽を削ぐ形になってしまいますので、組織対応を心掛けるよう、施工管理者や経営幹部に対し、経営者自らが注意を促していかなければなりません。

二つ目は、待遇面です。他社と同等以上ですか。その地域では、20~30代職人・職長の給与・年収平均はどれくらいでしょうか。それをご確認ください。情報は、県民経済計算(県発行)等に掲載されています。自治体職員の給与はどうですか(市区町村別に一覧で公開されています)。

一つの例として、目安を、自治体給与をMAXにして業界平均以上かどうかで図ることが出来ます。あとは、ハローワークの同業他社(もし引き抜きだとすれば条件比較が出来ます)求人広告を読み込むこともお忘れなく。同じような仕事をしているわけですから、年収ベースでみるとそんなに変わらないと思われます。

給与を上げる策としては、基本給をそんなに変えず、仕事に直結する資格と連動した資格手当・活用手当等で実収入を増やす方法を採用しているところが多いようですのでご検討ください。

上記対策以外にご確認いただきたいことがあります。社長自らが、社員に対し、「会社の方針・方向性、3年後、5年後はこうしていきたい」ということを普段から伝えているでしょうか。

聞こえてくる退職理由がほぼ他力本願です。辞める社員の自己主張もなさそうですし、意思も感じられません。会社に対する帰属意識がないように思います。結果、就労条件・待遇面に行ってしまいます。今こそ会社の魅力を作るタイミングではないでしょうか。会社の方向性明示(魅力・安心感)と人間教育が早急に必要と感じます。

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